プジョー「308CC」のトランクに搭載したパワー・アンプ
プジョー「308CC」のトランクに搭載したパワー・アンプ
[画像のクリックで拡大表示]
ビーウィズのブースでは、新日本無線の共同開発をアピール
ビーウィズのブースでは、新日本無線の共同開発をアピール
[画像のクリックで拡大表示]
メルセデス・ベンツ「SLRマクラーレン ロードスター」のトランクに搭載したパワー・アンプ
メルセデス・ベンツ「SLRマクラーレン ロードスター」のトランクに搭載したパワー・アンプ
[画像のクリックで拡大表示]
SLRマクラーレン ロードスターの両側のドアにスピーカーを配置
SLRマクラーレン ロードスターの両側のドアにスピーカーを配置
[画像のクリックで拡大表示]
SiC製SBDのウエハー(上)、パワー・アンプ「A-110S II」(下)、A-110S IIに搭載したオペアンプIC(中段左)、今回開発したSiC製SBD(中段右)。オペアンプICも新日本無線との共同開発品である(品名は「BS04」)
SiC製SBDのウエハー(上)、パワー・アンプ「A-110S II」(下)、A-110S IIに搭載したオペアンプIC(中段左)、今回開発したSiC製SBD(中段右)。オペアンプICも新日本無線との共同開発品である(品名は「BS04」)
[画像のクリックで拡大表示]

 高級カー・オーディオを手掛けるビーウィズは、東京ビッグサイトで開催中の「第42回東京モーターショー」(一般公開:2011年12月3~11日)の同社ブースにおいて、SiC製ショットキー・バリア・ダイオード(SBD)搭載のパワー・アンプ「A-110S II」を用いたカー・オーディオをデモンストレーションしている。

 プジョー「308CC」やメルセデス・ベンツ「SLRマクラーレン ロードスター」のトランク部分にそれぞれ同パワー・アンプを複数台を搭載し、音質の高さをアピールする。雑音が少なく、音の立ち上がりが良いことから「静寂感があり、かつ切れがある音を実現できた。どのようなジャンルの音楽でも、原音に限りなく近い」(ビーウィズの説明員)という。

 A-110S IIに搭載したSiC製SBDは、新日本無線とビーウィズが共同開発したものである(Tech-On!関連記事)。「BD01」と名付けたSiC製SBDを2個、A-110S IIのアンプ回路に電力を供給する電源ラインに用いた。これまで用いてきたSi製のSBDと置き換えるだけで電力の供給が安定化するという。アンプ回路が安定に動作するので、音質向上につながったとする。

電源のゆらぎを抑える


 新日本無線によれば、電力の供給が安定化する理由は大きく二つある。一つは、Si製SBDに比べて逆回復時間が約1/3、逆回復電流が約1/4に抑制されることで、高速スイッチングが可能になること。具体的には、逆回復時間はSi製SBDの33nsに対してSiC製SBDは12ns、逆回復電流は8Aが2A程度に減る。音量変化などの負荷変動に対する電源の追随性が高まったという。

 もう一つは、SiC結晶中の欠陥が少なく、欠陥起因のリーク電流などを抑制していること。欠陥起因のリーク電流があると電源ラインのホワイト・ノイズが大きくなってしまうという。このリーク電流を抑制している点が、新日本無線以外の半導体メーカーが販売するSiC製SBDとの大きな違いとする。「SiC製SBDを使えば、必ずしも音が良くなるわけではない。ここはすごく重要なポイント」(ビーウィズ 代表取締役の中島敏晴氏)。

 今回のSiC製SBDで結晶欠陥を抑制できた理由は、SBDにおいて電界集中による破壊を防ぐために電極付近に設ける「ガードリング層」の形成時の熱処理温度を1050℃に抑えたことによる。一般的なSiC製SBDでは、1700℃程度という高温で熱処理していた。

 ビーウィズによれば、オーディオの音質を高めようとすると、回路に用いる部品の素材にまで手を入れざるを得ないという。「市場で手に入る部品だけで回路を組むのでは、音質はあるところで限界を迎える」(同社の中島氏)からだ。コンデンサなど一部の部品はカスタム対応可能だが、高級オーディオでは購入個数が限られるので「半導体部品の改良には踏み込みたくても踏み込めなかった」(同氏)。今回、新日本無線と共同開発することで、課題が解決できたとする。

 新日本無線は今回の開発を皮切りに、汎用性を高めたオーディオ向けSiC製SBDを2012年3月までにリリースする計画である。

■変更履歴
掲載当初、Si製SBDの逆回復時間を「33ms」、SiC製SBDでは「12ms」としましたが、それぞれ「33ns」、「12ns」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。