講演する辻公壽氏 Tech\-On!が撮影。
講演する辻公壽氏
Tech-On!が撮影。
[画像のクリックで拡大表示]
図1●企画段階で使うシミュレータの要件 トヨタのデータ。
図1●企画段階で使うシミュレータの要件
トヨタのデータ。
[画像のクリックで拡大表示]
図2●HEVへの適用例 トヨタのデータ。
図2●HEVへの適用例
トヨタのデータ。
[画像のクリックで拡大表示]

 トヨタ自動車の辻公壽氏(車両基盤企画部 車両統合技術開発室 エンジングループ 主幹)は、自動車開発の企画段階で燃費などの各種仕様を見積もるためのマルチドメイン・シミュレータについて、「2011 Japan ANSYS Conference」(10月6日と7日に東京でアンシス・ジャパンとサイバネットシステムが主催)で講演した。マルチドメイン・シミュレータの効用や、シミュレータで使うモデルの記述にVHDL-AMSが最適なことなどを説明した。

 自動車の開発ではさまざまなシミュレータが使われている。多いのは、開発が進んだ段階向けのシミュレータだが、辻氏が今回の講演で採り上げたのは、開発の上流の企画段階で使うシミュレータである。企画段階では自動車全体に関わる各種の仕様が検討され、それ以降の設計の目標値が決まる。このため、電気(電子)、熱、操作/制御、機械・運動、化学など複数の領域を一括して扱えるマルチドメイン・シミュレータで、かつ、各領域で抽象度が高い(おおまかな)データからそれが低い(詳細な)データまで扱えるマルチレベルのシミュレータが必要になる(図1)。

 同氏は講演の中で、ANSYSのシミュレータ「Simplorer」を使った適用例を発表した。Simplorerは、元々旧・東ドイツのSIMEC GmbH & Co KGが開発したEDAツールで、パワー・エレクトロニクスの解析やエレ-メカ協調(連成)シミュレーションに向けた製品である(Tech-On!関連記事1)。SIMECは米Ansoft Corp.が買収し、AnsoftをANSYSが買収して、現在、SimplorerはANSYSの製品となっている(同2)。Ansoft時代に、ドイツの自動車工業会(VDA:Verband der Automobilindustrie)傘下のFAT-AK30が作成したVHDL-AMSモデルが、Simplorerで首尾よく稼働することが発表されている(同3)。

HEV適用事例では実測値とほぼ一致

 辻氏が見せたのは、ハイブリッド自動車(HEV)を対象にしたシミュレーションである(図2)。まず、基礎編。ドライバの自動車制御のデータとして(LA#4パターン)を想定し、25℃で稼働を開始した際のエンジン水温、エンジン回転数、バッテリの充電状態(SOC:Sate of charge)、および燃費のシミュレーション値と実測値の比較結果を見せた。いずれも、シミュレーション値と実測値はよく一致していた。例えば、燃費はシミュレーションでは22.0km/リットル、実測では21.7km/リットルで、誤差は1.4%だったという。