機器の電力消費量を「見える化」して節電を進める――。

 日本では2010年4月施行の改正省エネ法によって、温室効果ガス削減に向けたオフィスや工場などでの省エネ推進の重要性が高まってきた。そして今年、東日本大震災に端を発する電力不足が加わり、節電に向けた取り組みの歩をより一層速める必要が出ている。節電を進める上で注目を集めるのが、電力の「見える化」である。照明や空調、電源コンセントにつながるOA機器などの電力消費量を可視化し、無駄と思われるところに対策を打つ。電力の見える化と節電策について、自社内のリソースを活用できる企業がある一方で、どこから手を付けてよいのかに悩む企業は少なくない。悩める企業に対し、見える化をソリューション・ビジネスとして展開する企業が次々に出てきている。ただし、導入規模が大きくなりがちという指摘は多い。

 こうした中、見える化による節電策を手軽に始められ、かつ自社の導入経験を生かした節電策を提案できるサービスを始めた企業がある。それが、内田洋行だ。同社が2011年4月に発表したエネルギー監視・制御システム「EnerSense」は、分電盤の各ブレーカにセンサを取り付けて電力使用量を把握し、状況に応じて機器の動作を制御するというものである。機器につながるブレーカに流れる電流を測定するポイントが9点と、電流測定データを集約してパソコンなどの情報機器にCSVデータとして出力するという最小構成で、導入コストを約34万円に抑えている。オフィスへの導入事例として、同社が本社オフィスの3フロアに導入した場合(電流測定ポイントが75点)では約250万円と「他社に比べるとケタ違いに安い」(内田洋行)という。

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図1 左側の黒色部分がマルチメーター、中央の灰色の部品がゾーンコントローラー

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図2 配線に取り付けて使うCTセンサ

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図3 フロア内の照明の点灯状況をディスプレイに映し出したところ

 EnerSenseにおける電力測定システムは、分岐ブレーカの配線に取り付けて電流値を測る小型CT(current transformer)センサ、CTセンサの測定データを集約する「マルチメーター」、複数個のマルチメーターの測定データを束ねる「ゾーンコントローラー」、瞬時電力データや現在の測定値の一覧などをクライアントのパソコンで閲覧できるようにする「BEMS用サーバー」を使って構成する。

 例えば、照明につながる各ブレーカにCTセンサを取り付け、その情報を束ねて照明での電流値をまとめるマルチメーターを用意する。同様に空調関連や電源コンセント関連でもCTセンサとマルチメーターを取り付ける。それらをフロアごとにまとめるときには、各マルチメーターのデータを束ねるゾーンコントローラーを接続するといった具合になる。照明だけ、空調だけ、電源コンセントだけといった分電盤単位、さらには1階だけ2階だけといったフロア単位など、ビル全体だけでなく部分的に見える化を始められるように工夫した。CTセンサやマルチメーター、ゾーンコントローラーはいずれも外形寸法は小さいので、既存のブレーカや分電盤への設置が容易とする。そのため、既存のビルなどへの設置に向くとする。