今後30年間で87%の確率で起こるとされる東海地震。内閣府の中央防災会議は2003年にM8.0の地震が起こった場合として被害想定を算出している。朝の5時に地震が起こったとすると、建物の倒壊や土砂崩れ、津波などによって、約7900人から約9200人の死者が出ると予測している。この前提は、揺れによる被害が中心で、建物の下敷きになるなどの死者が約6700人と大半を占めている。一方、津波による被害は約400~1400人と少ない。

 こうした被害の想定は、図1に示すような津波が発生しても、これまで沿岸部に整備してきた防潮堤や河口の水門、陸地での開閉式の壁が機能すると考えているためだ。東海地震の沿岸部である静岡県や愛知県では、万が一の津波の際にはこうした水門などを閉めることで、津波の湾内への侵入や、川への遡上を防ぐ対策を進めている。しかし、地震により水門が壊れて作動しない、想定したより大きな津波が来て防潮提を乗り越えてしまうといった可能性は十分考えられる。したがって、今後、東日本大震災のケースを分析し、あらためて東海地震における被害想定のメカニズムを見直すことが避けられない。中央防災会議では2011年秋をめどにその作業を進めており、静岡県や愛知県ではその地震モデルを元に、独自に詳細な被害を想定する計画だ。

図1 東海地震における津波の高さの分布
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