2011年3月11日に起こった東日本大震災とそれに伴う東京電力福島第1原子力発電所の事故によって、東北電力と東京電力管内では、電力の供給量が大きく低下し、戦後最大の電力危機に直面することになった。

 多くの企業が、計画停電の情報に戦々恐々とする中で、計画停電を全く恐れなかったビル群がある。東京・港区六本木にある六本木ヒルズだ。それどころか、このビル群(街区)を開発した森ビルは震災発生から間もない3月17日、最大4000kW(4MW)もの電力を東京電力に供給すると発表したのである。

コージェネを電力と熱の比率を需要に応じて制御

六本木ヒルズの遠景。中央の大きなビルが「森タワー」。その左右にあるレンガ色の2棟のビルが住居棟である「六本木ヒルズレジデンス」。左端の白い建物が、ホテル「グランドハイアット東京」である。

 森ビルは六本木ヒルズで、都市ガスを基にした熱電併給システム、いわゆるコージェネレーション・システムを、開業直後の2003年5月に稼働させた。発電設備容量は、3万8660kW(38.66MW)。熱供給能力は、冷熱が240.516GJ/h(単位を置き換えると66.8MWth)で、温熱が179.758GJ/h(同49.9MWth)である。

 これで、「森タワー」やホテル「グランドハイアット東京」、約800世帯が居住するマンション2棟など、六本木ヒルズ内のビル11棟の電力と熱の供給を100%カバーする。加えて、敷地内にあるテレビ朝日にも、一定量の熱を供給している。近い将来には、やはり敷地内にある六本木ヒルズゲートタワーにも熱の供給を予定している。

 発電部分のシステムは、通常運転時は約4000kW出力の「蒸気噴射型ガス・タービン」を6台と、それらの排熱を利用して発電する500kW出力の「背圧蒸気タービン」1台から成る。発電時のエネルギー利用効率は55~60%である。