千葉製油所のタンクレイアウト(上)、タンクの構造(左下)、火災の様子(右下)
千葉製油所のタンクレイアウト(上)、タンクの構造(左下)、火災の様子(右下)
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 コスモ石油は、東日本大震災に伴い同社千葉製油所で起きた火災爆発事故の原因と再発防止策を明らかにした(ニュースリリース)。倒壊した液化石油ガス(LPG)タンクでは点検のために内部に水を満たしていたことから、支柱の筋交い部に想定以上の荷重が発生。タンク倒壊を端緒としてLPG漏出、爆発、延焼と被害が拡大していったという。

 今回の事故では、2011年3月11日の本震から30分後には火災が発生し、10日後の2011年3月21日に鎮火した。負傷者は6人(重傷1人/軽傷5人)、周辺にあった全てのLPGタンク(17基)や配管、道路が損壊した他、隣接していたアスファルトタンクの損壊部からアスファルトが流出したり、周辺工場の車両/船舶/建屋のガラスなどが破損したりする物的被害もあった。

 コスモ石油の調査によれば、2011年3月11日14時46分に発生した宮城県沖地震により、千葉製油所では震度5弱の揺れを受けた。その際、同製油所の364番タンクでは支柱筋交いの多くが破断した。当時、364番タンクは開放検査中で、タンク内の空気を除去するために水を注入していたため、設計時の想定以上の荷重が掛かったからだ。この段階では倒壊には至らなかったが、同日15時15分に茨城県沖地震(震度4)が発生し、364番タンクの支柱が座屈、タンク本体が倒壊した。

 その後、タンク倒壊によって漏出・拡散したLPGに着火、火災が発生した。この火災の影響で364番タンクに隣接するタンクが爆発。延焼とタンク爆発の被害がドミノ倒し式に拡大していった。

 LPGが漏出したのは、タンク倒壊時にタンクと接続されていた配管が破断したからだと同社は見ている。具体的には3カ所からLPGが漏出し続けていたと推定しており、そのうち1カ所では緊急遮断弁が開いた状態で固定されていた。本来、緊急遮断弁はLPGが漏出した際に速やかに流路を遮断するためのものである。ところが、事故当日は緊急遮断弁の開閉を司る空気の配管において微量の空気の漏出が確認されていた。そのため、空気圧力が低下した際に緊急遮断弁が流路を遮断するのを防ぐため、緊急遮断弁を開いた状態で固定していた。緊急時は現場が手動で開状態の固定を解除する運用としていたが、LPGが漏出してしまったため、現場に近付けなかったという。

満水状態を想定した設計に

 今回の事故を受けて、コスモ石油はLPGタンクや配管の設計基準を見直すとともに、既存施設の補強や検査作業の改善を進める。タンクの設計に関しては「LPGタンクを満水にすることは開放検査のための一時的な措置であるものの、その間に地震が発生した場合の潜在リスクの認識が不十分だった」(同社)ことから、これから新設するタンクに対して満水時を考慮した対策を採用する。既存のタンクに対しては、耐震性などの評価を行った上で補強策を施す。さらに、タンクの配管は揺れなどによる変位をたわみによって吸収する構造とする。

 検査作業については、仮に満水状態のタンクが倒れても周辺の配管や設備が破損したりLPGが漏出したりしないよう、事前に配管・設備の保護や切り離しを行う。満水期間自体も極力短くする。さらに、緊急遮断弁を開状態で固定する運用は今後一切行わないよう徹底するという。

 組織としての再発防止策も強化する。同社の従来の安全管理体制は、過去の経験事例に学び、不具合を未然に防止する取り組みを主体としていたため、震災などの緊急・異常時に備えた対応が十分ではなかったという。そこで、今後は安全総点検活動、緊急異常時の対応能力向上、再発防止策の実施に対する進捗管理および水平展開といった活動を進めていく。