左から2人目から堺屋太一氏、フィリップス エレクトロニクス ジャパン 代表取締役社長のDanny Risberg氏、新宿区長の中山弘子氏
左から2人目から堺屋太一氏、フィリップス エレクトロニクス ジャパン 代表取締役社長のDanny Risberg氏、新宿区長の中山弘子氏
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LED街路灯に照らされる「四季の路」の風景
LED街路灯に照らされる「四季の路」の風景
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 新宿区は、歌舞伎町にある「新宿遊歩道公園・四季の路」の街路灯をLEDに切り替え、2011年7月27日に点灯式を開催した。導入したLED街路灯は全部で16基あり、1基当たりLED照明器具が2灯備わっているので合計32灯ある。新宿遊歩道公園・四季の路は、新宿区役所付近から新宿ゴールデン街の横を通り、吉本興業の東京本部付近まで伸びる長さ260m・幅8.9mの公園風の遊歩道であり、これらのLED街路灯だけで遊歩道を夜間照らす。メタルハライド・ランプを使っていた従来に比べ、消費電力は約1/3、明るさは従来の50lxから100lxへ2倍になったとする。

 新宿区は今回の設置を皮切りに、「新宿区をLEDシティとしていく」として区道の街路灯のLED化を進め、将来的にはすべての区道でLED街路灯に切り替えたい考え。「街路灯をLED化し、クールに照らし、節電するということは、時代の要請でもあり、計画的に実施していくことが重要。今回の街路灯のLED化は、その最初の一歩を踏み出すもの。歌舞伎町の『四季の路』から新宿区のLED化は始まる」(新宿区長 中山弘子氏)と力を込める。街路灯のLED化については、2011年度中に実行計画を作成する予定。

堺屋太一氏がLED街路灯設置に尽力


 今回のLED街路灯は、元経済企画庁長官で歌舞伎町ルネッサンス推進協議会委員を務める作家の堺屋太一氏の働きかけにより、明星工業とフィリップス エレクトロニクス ジャパン、三協立山アルミ、日本発条の4社が新宿区に寄贈したもの。寄贈のきっかけは、照明器具を手掛ける明星工業から堺屋氏に対し、東日本大震災に端を発する電力不足で困惑する状況に「大阪の企業が、関東の人たちに何か役に立つことができないか」と相談したことにある。明星工業と堺屋氏は、堺屋氏が阪神・淡路大震災で復興委員を務めていたころからの旧知の仲だった。明星工業からは、街路灯をLED化することで大きな節電効果を生むので、LED街路灯の導入を提案したという。相談を受けた堺屋氏は、懇意である新宿区長の中山氏に明星工業の提案を申し入れたところ、中山氏は提案を快諾し、今回のLED街路灯の設置に至ったとする。

 東京など電力不足が懸念される地域では節電のために照明を暗くする傾向にある。だが「歌舞伎町というところは暗くなると犯罪の恐れがある。明るく楽しい歌舞伎町、本当に人々が住んでよかったと思う新宿を作るために節電をしながら明るくしよう」(堺屋氏)という考えの下、街路灯のLED化を進めた。

申し入れから、わずか1カ月で設置・点灯へ


 明星工業が堺屋氏に相談したのが2011年6月上旬、堺屋氏が中山区長に明星工業の申し入れを伝えたのが6月下旬。電力不足が深刻になる夏場に間に合わせるため、そこから約1カ月でLED街路灯を設置・点灯するに至った。LED街路灯の製作を急遽進め、7月24日に取り付け工事を実施し、点灯式前日の26日にすべてが完了した。

 設置したLED街路灯は、明星工業が販売する道路照明用の「Vu1-NE260-D12-6」。2灯のLED照明部分を二つ、1台の筐体に収めたもの。全光束は7200lmで、消費電力は85Wである。水銀灯400W相当の明るさを1/4以下の電力で得られるとする。寿命は光源部と電源部はいずれも7万時間であり、新宿遊歩道公園・四季の路での設置例では23年間使える計算になる。今回は寄贈されたものであるが、LED街路灯を購入した場合、初期費用とランニングコスト(電気代など)を合わせたコストは約4年で既存光源を使うよりも安くなるとする。

 光源部は、米Philips Lumileds Lighting社の白色LED「LUXEON Rebel」を複数個並べた。色温度は5000Kで、平均演色評価数(Ra)は70程度。設置に当たり、街路灯の支柱部分は従来のものを利用し、照明器具部分と電源部分を交換した。