論理規模が大きくなった,検証するデータが増えたなど,論理エミュレータを導入したいと思う機会は少なくない。一方で,新たなEDAツール,しかもハードウェアを導入するとなると,二の足を踏むことが多いのも現実だ。そんな相反する状況から,論理エミュレータを導入し,実際のLSIの検証で挙げた成果などをコニカミノルタテクノロジーセンターが講演で紹介した。

図1●河邊 恭氏 Tech\-On!が撮影。
図1●河邊 恭氏
Tech-On!が撮影。
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図2●論理エミュレータ導入に対する反発の声 コニカミノルタテクノロジーセンターのデータ。
図2●論理エミュレータ導入に対する反発の声
コニカミノルタテクノロジーセンターのデータ。
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 この講演は,2011年6月24日に新横浜で開催された「EVE 0-Bug Conference 2011 Summer」(主催は日本イヴ)で行われた。登壇したのは,コニカミノルタテクノロジーセンターの河邊 恭氏(システム技術研究所アーキテクチャ開発室 係長)である(図1)。コニカミノルタテクノロジーセンターは,コニカミノルタ・グループ内の研究開発を担う企業で,LSIの開発(設計)や設計環境の整備などはその重要な役割の一つだ。後述するように,今回,河邊氏は,仏EVE SAの論理エミュレータ「ZeBu」導入の背景や経緯,適用事例などを語った。現在,ZeBuは,コニカミノルタ・グループ内のLSI設計現場で広く使われているという。

このままでは,いずれ破たん

 最初に導入の背景である。コニカミノルタ・グループ内の機器に使う画像処理向けLSIの開発において,扱う画像の規模が次第に大きくなってきており,そろそろソフトウェアの論理シミュレータでは扱い切れないという危機感が深まってきた。「次は,論理エミュレータ」になるが,新しいものには常に反対意見がつきまとう。「本当に高速なの」,「高価でしょう」,「扱いが面倒臭さそう」などという声が聞こえてきた(図2)。

 こうした拒否反応を緩和するためには「実績作り」が必要と考えた河邊氏らは,論理シミュレータ(テストベンチが稼働)とZeBu(DUT:device under test)が稼働)をピン・レベルで接続するというベーシックな形で稼働させてみた。この形ならば,論理シミュレータからの移行が容易だからだ。稼働の結果,ベーシックな稼働形態ながら,論理シミュレータと比較して80倍の高速化を達成した(Tech-On!関連記事1)。

 さらに論理エミュレータ導入のコストは,従来,市場にあった製品に比べて1ケタ低い。しかも,立ち上げ工数は2週間程度で済み,従来製品よりもぐっと簡単になった。こうして,論理エミュレータ導入に対する社内の空気が変わり始め,前向きになったという。「今まで一度も話をしたことのない上層部から,論理エミュレータの効果について聞かれれることもあった」(河邊氏)。