大西氏は、人の流れの研究で培った解析技術で電力需要のカーブをいくつかの要因に分割し、停電予報に利用する。東京電力が公表する1時間ごとの電力需要実績の過去データを入手し、過去の平均値と現在の数値のずれ量を使って、あるアルゴリズムで電力需要を予測する。同月同日であっても同じ曜日ではない。平日なのか、土曜日や日曜日、祝日なのかで電力需要は変わってくるので、同等の曜日で比較しているという。

 カーブを各要因のピークに分割すると、家庭での電力需要に相当する部分が見えてくる。停電予報に記載する家庭での節減技術、例えば「デスクトップPCをノートPCに替える」「冷蔵庫の中身を半分にする」「トイレや風呂の白熱灯をLEDに替える」「家で電気を使うのは夜10時以降にする」などの各家庭での効果に世帯数を掛け合わせ、その数値を家庭での電力需要予測に反映させると節電技術の影響として可視化できる。

重要な過去データの蓄積

 大西氏によれば、予測の精度を高めるには、過去データの蓄積量を増やす必要がある。過去データが多くなるほど過去の平均値が正確になるからだ。5~6月は1年を通じて電力需要が少ない時期、つまり停電が生じる危険性が低いので、同氏はこの期間中に過去データを精力的に収集するという注2)。それと同時に、予測のアルゴリズムを改良していく考えである。

注2)東京電力が公開する1時間ごとの電力需要実績は、当日の実績、および前日についてはテキスト・データで提供されるものの、前年の相当日についてはグラフで提供される。このため、物差しなどを使ってグラフから数値を読み取らねばならず、手間が掛かるという。大西氏は、すべての電力需要実績についてテキスト・データでの提供を切望している。

 さらに1日内の予測を、将来的には1年内といった長期予測に発展させたいという。電力需要に関連する各種の過去データの蓄積が進めば技術的に実現可能であるとする。長期的な停電予測ができれば、その準備、例えば夏休みなど企業の長期休暇のスケジュールなどの調整にも活用できるだろう。