PTCジャパンは、東日本大震災後に顧客企業などを訪問して得た情報として「震災後、設計業務を止めたところが多く、計画停電の影響も大きかった」ことなどを明らかにした。直接被災してはいない場合も含めて、多くの顧客企業でこれまで認識されていなかった問題点が浮かび上がったという。同社ソリューション戦略企画推進室PLMシニアエキスパートの後藤智氏が、PLMツール「Windchill 10.0」(関連記事)」の説明会で解説した。主な内容な次の通り。

・設計仕掛かり中のデータは個人管理(会社所有であっても)のパソコンにたまっている状態。もしオフィスに浸水があった場合、設計業務が継続できなくなる。

・設計データを集中管理している本社のデータセンターが被災した場合、各事業所での設計業務が継続できなくなる。あるいは、計画停電などで一時的にサーバと通信できなくなるだけでも、技術者が手元のパソコンで扱っているデータは正しい状態に維持できるのかが不明。

・ベテラン設計者や開発リーダが出社できなくなったり、連絡が取れなくなったりした場合に、仕掛かり中の設計作業の継続はだれがどのような権限で進めればよいのかが不明。

・計画停電では、実際に停電している時間は3時間程度でも、サーバのシャットダウンに1時間、再立ち上げに1時間、さまざまな調整作業に1時間かかるから、結局前後で計6時間のロスがある。一時期は、これを毎日のように実行しなければならなかった。

・開発業務の進行管理に使っているプロジェクト管理機能をもって、設計者の安否確認に用いるというアイデアを持っている顧客があった。

・このような議論は、これまでも大きな地震が起こるたびに繰り返されてきた。時間が経てばまた風化する恐れがあるが、かといって必要以上に顧客を脅かすようなこともできない。ただ、サプライチェーンのデータは事業継続性を重視した管理になっていることが多いので、エンジニアリング・チェーン(設計、開発、生産準備、生産に至るプロセス)のデータも同じくらい大事に扱ってほしい、という気持ちはある。米PTC本社は、ベテランの技術系社員のチームで不測の事態でも止まらないPLMシステムのガイドラインづくりを始めている。