GEMITSの概要を説明する小倉真治氏 Tech-On!が撮影。スライドはGEMITSのデータ。
GEMITSの概要を説明する小倉真治氏 Tech-On!が撮影。スライドはGEMITSのデータ。
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現在の救急現場 スライドはGEMITSのデータ。
現在の救急現場 スライドはGEMITSのデータ。
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GEMAPの設立発起人と現在の参加団体 GEMITSのデータ。
GEMAPの設立発起人と現在の参加団体 GEMITSのデータ。
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 救急医療全体の支援システムを構築するプロジェクト「GEMITS:Global Emergency Medical supporting Intelligent Transport System」を全国に広げることを狙ったコンソーシアムが2011年6月に発足する。発足に先立ち,その意義などについてを報道機関に説明する会見が2011年5月26日に東京で開催された。

 診療記録などの医療情報の流通を円滑にして,医療の最適化を狙う試みがさまざまな機関や場所で行われている。GEMITSはそうした試みの一つである(関連ページ)。その特徴は,救急医療に重点を置いていることだ。「救急医療では患者が重症の場合が多いにもかかわらず,医療に必要な情報は一般的な診療よりもはるかに少ない。これを何とかしたいと立ち上げたのがGEMITSである」(岐阜大学大学院医学系研究科救急・災害医学分野 教授の小倉真治氏)。

 例えば,救急車で患者が病院に運ばれる場合,病院の選択は,患者をみた救急隊員がこれまでの経験を頼りに行っている。ただし,患者の治療に最適な医師がそのときに病院で待機しているかどうかは,すぐには分からない。救急隊員は,病院に電話をかけて,患者を受け入れ可能かどうかを確認する。この確認作業の時間が次第に延びているという。

 GEMITSでは,救急隊員が患者の状態を入力することで,最適な病院の候補を短時間に表示する。これで,患者が最適な病院に搬送されることを支援する。さらに,GEMITSでは,受け入れる側に病院に対しては,患者の診療履歴などを前もって伝えておく,病院側で必要な検査や処置の準備ができる。さらに検査によって他の病院への転送が必要な場合は,上述した救急隊員向けの搬送先推奨の仕組みが利用できるようになっている。

 小倉氏によれば,GEMITSは約7年前から開発・整備が始まり,最近では岐阜大学を中心にして,その試用が始まっている。このGEMITSの思想や構築したロールモデルを全国に広げることを狙って設立されるコンソーシアムが「GEMAP:GEMITS Alliance Partners」である。

 「GEMITSは,救急車による搬送時などを対象にした「病院前医療連携」,病院での治療を対象にした「病院間情報連携」,治療後の介護などを対象にした「緊急介護支援」など,救急医療全体をカバーしている。GEMITSはカバー範囲がもっと広いプロジェクトだと考えている」(同氏)。一方,ほかのプロジェクトは部分的なものが多いという。部分的なプロジェクトの成果を,全体カバーのGEMITSのロールモデルと合わせることで,強力な医療支援システムを構築したい。これがGEMAPの狙いだという。

 ただし,全国の医療支援のプロジェクトは,それぞれ支援機関が異なるなどといった事情があり,簡単には統合できないだろう。それでも第1歩を踏みださなければ,道は開けない。「まずは関係のあるプロジェクト同士で情報交換をするところから始めたい」(東京電機大学未来科学部 学部長 教授の安田浩氏)。安田氏は小倉氏らと共にGEMAPの発起人である。

■変更履歴
この記事の掲載当初,「GEMITS」が「GEMTIS」と表記されていた個所が,本文と図の説明文に複数ありました。お詫びして訂正します。現在は修正済みです。