デンソーの石原秀昭氏(半導体先行開発部長)は,カー・エレクトロニクスのこれまでの軌跡や今後の方向性について,「LSIとシステムのワークショップ2011」(2011年5月16日~18日に北九州国際会議場で開催)の招待講演で語った。講演のタイトルは,「自動車組込みシステムにおけるヘテロジニアス・インテグレーションの未来像」である。
同氏が語ったように,自動車は,1900年代から長いこと,主に機械技術や内燃機関の改善によって進化してきた(図1)。その転機は1980年に訪れる。排出ガスの規制に対応するため,マイコン制御が始まった。これを皮切りに,さまざまな制御にICが使われ,「クルマがエレクトロニクスと半導体で進化する」ようになった。1980年代後半にはカーナビが登場し,制御系だけでなく,インフォテインメント系でも,半導体が活躍を始める。そして,1997年にプリウスが発売されると,弱電系だけでなく,パワー半導体も続々使われるようになった。
1970~2000年くらいまでの間を,同氏は,カー・エレクトロニクスの第1幕だとした。第1幕は,基本的に,シリコン・チップの上に集積する時代で,プロセサやロジック,アナログまで搭載するSoCやハイエンド・マイコンがその象徴と言える。微細化用語でいえば,More Mooreが第1幕である。2000年以降から始まる第2幕は,ヘテロジニアス・インテグレーションの時代になるという(図2)。微細化用語では,More than Mooreで,機械(例えばMEMS)と電子/電気(例えばSoC)の一体化などがその例である。
3次元的に集積する
第1幕と第2幕では,統合や集積の方向も変わる。第1幕の象徴であるSoCでは,チップという2次元平面にいかに機能を詰め込むかが重要だった。第2幕では,3次元方向に集積(いわゆる縦積み)する(図3)。縦積みのメリットを,石原氏は,いくつか挙げている。例えば,プロセサ-メモリ間のデータ伝送速度向上による高性能化,異種機能要素のライブラリ化による開発の柔軟性向上や開発期間の短縮,雑音源を内層に閉じめることによるEMIの低減,大きなキャパシタやインダクタの利用によるSoCでは不可能な回路特性の実現などである。