業績を説明する三菱電機 常務執行役 取締役 経理部長の吉松裕規氏
業績を説明する三菱電機 常務執行役 取締役 経理部長の吉松裕規氏
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 三菱電機は,2010年度通期(2010年4月~2011年3月)の連結決算を発表した(発表資料)。売上高は3兆6453億円で前年度比9%増,営業利益は2337億円で同 148%増と,増収増益となった。

 今年度は全セグメントで黒字化を果たした。セグメントの中で,売上高の伸び率が高かったのは,FAシステムなどを手掛ける「産業メカトロニクス」,半導体事業などを手掛ける「電子デバイス」,そしてテレビやエアコンを扱う「家庭電器」の3分野である。

スマホやタブレットが牽引


 産業メカトロニクス部門の売上高は9270億200万円と前年度比26%増。営業利益は1000億8900万円と前年度比で739億5100万円の増加で,2007年度以来,1000億円を上回ったという。FAシステム事業や自動車機器事業などが好調だったためだ。

 FAシステム事業の中でも,スマートフォンやタブレット端末に関連した分野で,需要が拡大したという。自動車機器事業に関しては,国内や西ヨーロッパにおいて,販売奨励策打ち切りによる需要の冷え込みがあったものの,中国やインドなどで需要が拡大し,受注・売り上げともに前年度を上回った。

パワー半導体の売上高は1100億円超


 電子デバイス部門の売上高は1759億円1000万円と前年同期比27%増。営業利益は59億100万円と,前年同期の71億4100万円の赤字から脱した。半導体事業と液晶事業が牽引した。半導体事業ではパワー半導体や通信用光デバイスなど,液晶事業では産業用途や車載用途の製品の需要が拡大したためだ。

 電子デバイス部門の中でも大きな売り上げを占めるのがパワー半導体である。同部門の今期売上高1759億円1000万円のうち約85%を半導体が占め,そのうちの75%ほどがパワー半導体の売り上げだという。つまり,通期のパワー半導体の売上高は1121億円ほどになる計算だ。

 家庭電器部門の売上高は9244億7800万円と前年同期比12%増。営業利益は420億800万円と前年同期比で371億9900万円の増加である。2010年夏の猛暑によって空調機器が伸び,エコポイントの制度変更に伴う駆け込み需要で,国内向け空調機器や液晶テレビ,冷蔵庫などがよく売れたという。そして各国政府の補助金制度などによって太陽光発電システムの売り上げが伸びたとする。

 一方,不振だった部門は「情報通信システム」。売上高は4879億1500万円と前年同期比7%減。営業利益は137億4300万円と,前年度比49億2900万円のマイナスだった。通信事業や情報システム・サービス事業,そして電子システム事業が振るわなかった。

東日本大震災の影響は1000億円


 決算の発表の場では,2011年3月に起きた東日本大震災による影響についても述べた。2010年度では,同震災による損失55億円分を「雑損失」に計上した(ルネサス エレクトロニクスの分は除く)。震災の影響が出るのは,「とりわけ2011年度上期」(三菱電機 常務執行役 取締役 経理部長の吉松裕規氏)とみており,その額は約1000億円とする。この損失を,FAシステム事業などの好調な事業で穴埋めし,「実質,500億円ほどにまで軽減したい」(同氏)としている。

 なお,2011年度通期(2011年4月~2012年3月)の連結業績を,売上高3兆7700億円で前年度(2010年度)比3%増,営業利益2300億円で同2%減と見通しを立てた。