営業損益の分析(東芝の決算発表資料から抜粋)
営業損益の分析(東芝の決算発表資料から抜粋)
[画像のクリックで拡大表示]

 東芝は2010年度(2010年4月~2011年3月)の連結決算を発表した(決算発表資料のpdf)。売上高は前年比1.7%増の6兆3985億円、営業利益は同91.8%増の2403億円だった。円高や東日本大震災の影響を受けたものの、デジタルプロダクツ、電子デバイス、社会インフラ、家庭電器の全事業セグメントで営業黒字を達成した。純損益は前年度における197億円の赤字から1575億円改善して1378億円の黒字となり、金融危機前の水準に回復した。円高の影響は「売上高で2500億円の減少、営業損益で560億円の減少」(東芝 代表執行役副社長の村岡富美雄氏)であり、震災の影響は「売上高で700億円の減少、営業損益で200億円の減少」(同氏)だった。

 前年比の伸びが特に大きかったのが、電子デバイス事業である。売上高は前年比6%増の1兆3477億円となり、営業損益は前年度の204億円の赤字から1072億円改善して868億円の黒字に転換した。この営業利益の77%に当たる664億円を、NANDフラッシュ・メモリを中心とする半導体事業で稼いだ。NANDフラッシュ・メモリは、スマートフォンやタブレット端末、SSD向けなどで需要が大きく伸びたという。平均売価が前年比で20%強下がったものの、ビット需要が約60%伸びたとする。これまで営業赤字が続いていた液晶事業も、スマートフォン向けに需要が伸びたことなどから黒字化した。営業損益は、前年度における361億円の赤字から462億円改善し、101億円の黒字である。

 今回の震災の半導体事業への影響に関しては、震災後に稼働を停止していた岩手東芝エレクトロニクスでの生産を4月18日に一部で再開し、通常時の1/2程度の生産量まで回復しているという。ただし、全面復旧の見通しが立っていないことなどから、「別工場への生産シフトを含め、最適な供給体制を検討する」(村岡氏)とした。四日市工場など、被災の程度が小さかった半導体工場については「Siウエハーの供給が不足気味といった問題は確かにあるものの、供給先との話し合いによって対処できており、生産への影響はない」(同氏)としている。

 デジタルプロダクツ事業は、液晶テレビやパソコンの販売台数が伸びたことから、売上高は前年比3%増の2兆3286億円となった。営業損益については、液晶テレビ事業とパソコン事業は黒字だったものの、HDD事業が100億円強の赤字となったことから、営業利益は前年比38%減の132億円にとどまった。HDD事業については、2011年度(2011年4月~2012年3月)には営業損益トントンにまで回復することを見込んでおり、市場シェアは業界再編の影響を受けることなく「今後も10%程度を維持できる」(同氏)見通しとした。

 社会インフラ事業は引き続き堅調であり、売上高が前年比2%減の2兆2677億円、営業利益がほぼ横ばい(1億円減)の1371億円だった。電力・産業システムは好調だったが、社会システム、ソリューション、医用システムなどは伸び悩んだ。家庭電器事業は、エコポイント制度や2010年夏の猛暑の恩恵をこうむり、白物家電や家庭用エアコンが好調だった。売上高は前年比3%増の5998億円、営業損益は前年度の54億円の赤字から142億円改善して88億円の黒字に転換した。

 東芝は今回、2011年度の連結業績見通しを併せて発表した。売上高は前年比9.4%増の7兆円、営業利益は同25%増の3000億円を見込む。営業利益の約1/2に当たる1400億円を半導体事業で稼ぐ計画である。震災の影響は「通期では売上高、営業損益ともにゼロ」(村岡氏)とみる。震災の影響による需要の減少などによって売上高で3000億円の減少、営業損益で700億円の減少が予想されるものの、「社会インフラや家電関連の復興需要などによってカバーできる」(同氏)とみる。震災の原子力事業への影響については、「中長期的には売り上げの減少などが予想されるものの、2011年度は売上高と営業損益ともに大きな影響を受けない見通し」(同氏)としている。