Lumiotec(ルミオテック)は2011年4月12~17日、イタリア・ミラノ市とその周辺で開催された展示会「MILANO SALONE 2011」の「FUORISALONE」に参加し、ミラノ市内トルトーナ地区にある会場「OPIFICIO 31」内で、薄く軽い有機ELパネルの特徴を生かした照明器具を発表した。展示したのは同社で作ったプロトタイプで、2011年1月から量産を始めたパネルを使用した。

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スタンド・ライトなどを並べて「人工の森」を表現した(写真:三橋 倫子)

 メインの展示室では壁面に鏡を貼り、高さ2870mmの木をモチーフにした白色光のスタンド・ライト「TLEE large」を多数配置した。木の枝を模したアームに有機ELパネルをそのまま接続する。配線やコネクタも試作用の細い仕様を選んだ。アームは有機ELパネルに似たアルミニウム素材であり、厚さ1mm、2mm、1mmの板を張り合わせて全体で厚さ4mmに仕上げた。挟み込んだ厚さ2mmの部分を溝にして、配線を隠している。分解すると本体の長さが80cm程度のユニットに分解できるなど、持ち運びも考慮した照明器具だ。

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「TLEE large」の床には大地を意識させる電球色のアッパー・ライトを埋め込み、床の白を際立たせるため白色の「Flower Pot」で床を照らした(写真:三橋 倫子)

 Lumiotecは展示のテーマを「FOREST of EVOLUTION(進化の森)」と題した。会場の建物の前に植栽を植えて「自然の森」をつくり、ハンガーの形に切り取った薄いプレートに有機ELパネルを貼付けた「Hanger」を植栽に展示した。中に入ると、パネル展示とスタンド・ライトに触れられるようにした。さらにメイン展示室には「人口の森」を表現した空間を設けた。

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ハンガーの形に切り抜いた金属プレートに有機ELパネルを貼った「Hanger」を植物に引っ掛けた(写真:三橋 倫子)

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展示会場の前は駐車場だったが、植栽で「自然の森」を表現した(写真:三橋 倫子)

 会場の空間デザインからプロダクト・デザイン、Webサイトのディレクションまで手掛けたのは、三井直彦氏(Triumph Design and Consulting Co., Ltd./トライアンフ・デザイン・アンド・コンサルティング社代表取締役)。同氏は、ミラノを拠点にデザインとコンサルティングを手掛けている。

 三井氏は、今回の会場構成について「光の持つ原始性と最新鋭の有機ELの技術を対比させた。MILANO SALONEでは、製品を並べるだけでは来場者の目を引かないため、製品だけでなく展示空間もデザインした。欧州で多くの人に受け入れられるには、まず、デザイン性の高さで一流だということを示す必要がある」と話す。

 LumiotecのMILANO SALONE出展の背景には、欧州進出に向けて、イタリア企業2社と提携し、デザイン系のプロモーションを加速させるという意図がある。提携先の一つは、三井氏が代表取締役を務めるTriumphで、同社からデザイン支援を受ける。もう1社は、同国の老舗照明設計コンサルティング事務所Pollice Illuminazione s.r.l(ポリチェ・イルミナツィオーネ社)で、同社から照明設計のコンサルティングを受ける。Associazione Italiana Di Illuminazione(イタリア照明協会)への加盟手続きも進めている。

Lumiotec 取締役 マーケティング部長の森田好彦氏は「当社は有機ELパネルを照明用に販売するため、白色と電球色に絞っている。生活空間で実際に利用する照明として、パネルの輝度は3000cd/m2を基準に考えている。欧州では今回発表したテーブル・ランプで照度が足りる」と話す。さらに「電球色の需要が多いとはいえ、欧州では5000K程度の白色が『品のある白』と受け取られて、予想以上に好評だ」と森田氏は手応えを語る。

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調光できるデスク・ライト「Vanity」。白色と電球色を用意した(写真:三橋 倫子)

 展示したプロトタイプの発売は未定だが、製品化を想定した仕様となっている。森田氏は「出展の目的は、照明器具メーカーなどへの有機ELパネルの販売につなげることだが、技術が進歩し販売先などが整うまでは、要望があれば照明器具の生産と販売も検討したい」と、現地での反響の大きさから今後の展開にも期待している。

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左からLumiotecの森田好彦取締役とデザインを担当したTriumphの三井直彦代表取締役(写真:三橋 倫子)