産総研が開設したWebサイト
産総研が開設したWebサイト
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 産業技術総合研究所(産総研)は、工業製品の残留放射線量計測に関する特設Webサイトを開設した。2011年4月18日の開設以降、日本における計量のトレーサビリティーの仕組みや、単位の換算表を順次公開。英文での発信も行っている。東京電力の福島第一原子力発電所の事故を受け、工業製品でも残留放射線量の計測が求められる事例が増えている中、国家計量標準機関である産総研が積極的に情報を発信することで、計測値の信頼性を高める狙いがある。

 開設したのは、「放射線計測の信頼性について」と題したサイト。現段階では、放射線計測の信頼性を担保するためのトレーサビリティーの仕組みや国際相互承認制度、規格などに関する文書を掲載している他、計測値を別の単位に換算する場合の換算表も公開している。

 福島第一原子力発電所の事故により、日本から輸出された工業製品に対してさまざまな国・地域で放射線量の検査が行われたり、計測値の提出が求められたりしている。経済産業省によれば、米国/ドイツ/イタリア/ロシア/中国/香港/台湾などで各国・地域の法令や基準に基づいた検査が実施されているという(経済産業省が2011年4月15日に発表した各国・地域の検査実施状況、PDF形式)。こうした事態を受けて、自社製品の放射線量の計測を検討する企業が増えており、産総研にも多数の問い合わせが寄せられた。

 その際に求められるデータは、主に単位時間当たりの人体の放射線被曝量(線量率、μSV/h)だ。さらに、表面に付着した放射性物質の量として単位面積当たりの放射能量(放射能面密度、Bq/cm2)を用いる場合もある。だが、一般的に使われるGM(Geiger-Muller)計数管式サーベイメータで計測するのは、単位時間当たりの放射線数(計数率、cpm:count per minute)なので、計測データの単位を計数率から線量率や放射能面密度に変換する必要がある。ただし、その換算率は一様に決まっているわけではなく、計数率の計測方法や付着した放射性物質の種類によって変わる。従って、計測方法や前提条件を厳密に設定・管理しなければ、信頼性の高い計測データにはならない。

 産総研が公表した文書では、信頼性の高い計測データを得るにはどのような手順を踏めばよいのかといったことが解説されている。前出のサイトには参考情報としてデータの単位換算表も掲載されているが、それは特定の計測方法や前提条件に基づいており、全ての計測データに対して適用できるものではない。

 産総研によれば、きちんと校正されていない計測器や訓練を受けていない計測作業者によるデータは、信頼性が低い上に数値だけが一人歩きする恐れがあるため、今後も同サイトを通じて積極的に情報発信していくという。