トヨタ 代表取締役社長の豊田章男氏(右)と、Microsoft社 CEOのSteve Ballmer氏(左)
トヨタ 代表取締役社長の豊田章男氏(右)と、Microsoft社 CEOのSteve Ballmer氏(左)
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 トヨタ自動車と米Microsoft社は米国時間2011年4月6日、テレマティクス分野で戦略的な提携を結んだことを発表した(PDF形式の発表資料)。プラグインハイブリッド車(PHEV)や電気自動車(EV)などに向けたエネルギ情報管理サービスを共同で開発する。2社は、トヨタの100%子会社となるトヨタメディアサービスに合計10億円を出資する。出資の内訳や開発体制などの詳細については2011年7月ごろまでに詰める。

 トヨタ 代表取締役社長の豊田章男氏は「クルマと人と家のエネルギ情報などを管理するグローバルなシステムを構築する。この新たなパートナーシップは、全世界の消費者に、優れたサービスを提供するための重要な第一歩である」と、期待を述べた(図1)。Microsoft社 CEOのSteve Ballmer氏は「今回の戦略提携で、全世界規模のプラットフォームを利用した次世代テレマティクス製品を開発できる」という。

 今回の提携により、トヨタの次世代テレマティクス製品をMicrosoft社の「Windows Azure」クラウド・サービス(Tech-On!関連記事)上で開発する。トヨタが2012年中に出荷予定のEVやPHEVで実用化する方針だ。EVやPHEVへの対応を先行させる理由については、「EVやPHEVで、消費者が電気を効率的に利用する際に、こうしたテレマティクス製品が必要になる」(豊田氏)という。このサービスは、当初は北米市場や日本市場で提供する。トヨタはMicrosoft社の技術を利用するテレマティクス向けの全世界規模のクラウド・プラットフォームを、2015年までに完成するという目標を掲げている。

 トヨタはこれまで、次世代電力網「スマートグリッド」などに向けた「トヨタスマートセンター」と呼ぶ情報システムや、テレマティクスサービス「G-BOOK」などの通信を活用した自動車向けサービスを開発してきた(Tech-On!関連記事)。今回の提携を機に、こうしたシステムを「世界的に展開しやすくなる」(トヨタ)と考える。

 Microsoft社は以前、米Ford Motor社のEVやPHEV向けに、テレマティクス製品を開発する方針を2010年4月に発表していた(Tech-On!関連記事)。今回のトヨタとMicrosoft社の提携で目指す内容は、このFord社との取り組みに近い部分がある。例えば、利用者がスマートフォンを使ってEVの充電スケジュールを制御したり、車内の温度を調整したりするというアプリケーションである。次世代電力網(スマートグリッド)と連携して情報をやりとりする機能も想定している。音声認識機能や、家庭内の電化製品を管理する機能も備える予定。

「10年以上の付き合い」を強調

 今回両社は、Web上でバーチャルな記者発表会を開催した。この中で豊田氏は、同氏がかつて担当した「GAZOO(ガズー)」のテレマティクス製品の開発に、Microsoft社の協力を得ていたことに触れた。「GAZOOを立ち上げた1998年頃、Microsoft社の支援が大変役に立った」(同氏)。豊田氏は、こうしたMicrosoft社との10年間以上の付き合いがあることが、今回の戦略提携の背景にあるとした。今回の提携において豊田氏は、2011年1月にMicrosoft社のBallmer氏に直接連絡して、テレマティクス製品の開発の協力について議論したという。