トヨタ自動車電池研究部は、全固体リチウムイオン2次電池のLiCoO2(コバルト酸リチウム)活物質とLixLa(1/3-x)TaO3(タンタル酸リチウム・ランタン)固体電解質の接合界面を作製し、同界面でのイオン伝導を精密に解明する段階に入った。同部は、現行のリチウム2次電池を搭載する電気自動車やプラグイン・ハイブリッド車(PHV)の航続距離を大幅に伸ばすために、小型・大容量の全固体リチウムイオン2次電池の開発を急いでいる。そのカギは、活物質と固体電解質の接合界面でのイオン伝導現象の解明とみている。

 同部が選んだ活物質のLiCoO2は1000℃、または1100℃で焼結すると、相対密度が90%以上の焼結体を作製できる焼結条件を見い出した。一方、電解質候補のLixLa(1/3-x)TaO3は1500℃の高温で焼結しないと、相対密度が90%以上の焼結体を作製できないことを明らかにした。この焼結条件で作製した両者の焼結体を、上下からAl2O3(アルミナ)焼結体で挟み込んで、加熱・加圧して活物質/固体電解質の接合体を作製した。大気中で温度800℃まで加熱し、約40分保持する中で、約10分間にわたって3万N(3000kgf)加圧したところ、接合体が作製できた。接合界面を観察した結果、約10μmの中間層ができていることがわかった。

 電池研究部は今後、物質・材料研究機構(NIMS、茨城県つくば市)の観察・解析装置などを用いて、接合界面でのイオン伝導現象を精密に解明する計画だ。トヨタは2008年7月に物質・材料研究機構内に、NIMS-トヨタ次世代自動車材料研究センターを開設し、次世代自動車材料を生み出すために必要な基本現象メカニズムの解明などを進めてきた。さらに、物質・材料研究機構が2009年に設けたナノ材料科学環境拠点(GREEN)にも参加し、全固体リチウムイオン2次電池のイオン伝導の解明を加速する計画である。活物質/固体電解質の接合体を作製できたことで、イオン伝導の解明が具体的に進む段階に入ったといえる。