SHV映像のIP伝送に用いた技術群など
SHV映像のIP伝送に用いた技術群など
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NTTの映像配信技術の進化
NTTの映像配信技術の進化
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今回のSHV伝送は,放送と通信の連携の一里塚として,NHKとNTTが共同で実現したという。
今回のSHV伝送は,放送と通信の連携の一里塚として,NHKとNTTが共同で実現したという。
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放送と通信の協業を強調
放送と通信の協業を強調
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実際に握手も。左から,NTT未来ねっと研究所所長 高原厚氏,NTT 代表取締役副社長 宇治則孝氏,NHK 専務理事技師長 永井研二氏,NHK技研 所長 久保田啓一氏
実際に握手も。左から,NTT未来ねっと研究所所長 高原厚氏,NTT 代表取締役副社長 宇治則孝氏,NHK 専務理事技師長 永井研二氏,NHK技研 所長 久保田啓一氏
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 日本電信電話(NTT)と日本放送協会(NHK)は2011年2月22日,共同記者会見を開き,会場にIP(internet protocol)ネットワークを用いた8K×4K(3300万画素)のスーパーハイビジョン(SHV)映像をライブ中継した。また,技術の実演に加えて,今後のNHK(放送)とNTT(通信)の協力関係の深さも強くアピールした。

 この記者会見は,2011年2月22~23日にNTT武蔵野研究開発センタで開催した「NTT R&Dフォーラム」に併せて開いたもの。SHVカメラで撮影した映像は,まず符号化した後に,2本のTS(transport stream)信号に分け,それをIPパケットのデータに変換した後,2本のデータ・ストリームを同期させながら暗号化して伝送した。

 ネットワークは大学などが研究用に用いている大容量のIPネットワークを利用。伝送経路は,東京都世田谷区にあるNHK放送技術研究所から,米国経由でイギリス・ロンドンにある英BBCを経て会場に至る「ロンドン折り返し」というもの。これによって,「パブリック・ビューイングであればSHV中継を実現できるフェーズになった」(NTT)という。

 発表によると,伝送に要した帯域は300Mビット/秒。平均遅延時間は310ms,ジッタは最大50ms,パケット・ロスは0.07%だった。「当初想定していたよりジッタやパケット・ロスは大きかった。経路上に多数のルーターがあり,帯域保障もしなかったからだろう」(NTTの技術者)。

 ジッタなどが大きくても伝送できたのは,例え5%という大きなパケット・ロスが起こってもデータを回復できる「LDGM(low density generator matrix)」というパケット消失の訂正符号を用いたり,ジッタを補償する「パケット出力同期制御技術」を用いたためだという。いずれもNTT未来研などが開発した技術である。

 NHKは以前から,21GHz帯の衛星を利用したSHV放送を2020年に開始する目標を明らかにしている。今回は,2030年頃には,「空間像再生型立体テレビ」とも呼ぶ,インテグラル・フォトグラフィ(IP)方式の3D映像を実現することも明らかにした。「SHVはNHKにとって最後の2D技術になる」(NHK技研 所長の久保田啓一氏)。

NTTとNHKは連携へ

 会見は,NTTとNHKの協力関係の深さを強くアピールする場にもなった。「2006年のNHK紅白歌合戦をパブリック・ビューイングで中継したのを皮切りに,協業する機会が増えている。放送と通信の融合・連携が進む中,今後は一層の協業を進めていく」(両社)。