写真1 NEC執行役員ネットワークプラットフォーム事業本部長の手島俊一郎氏
写真1 NEC執行役員ネットワークプラットフォーム事業本部長の手島俊一郎氏
[画像のクリックで拡大表示]
写真2 NECが開発中のLTEの小型基地局装置
写真2 NECが開発中のLTEの小型基地局装置
[画像のクリックで拡大表示]

 NECは2011年1月20日,福島県福島市で移動通信の基地局事業についての説明会を開催し,海外の大手基地局メーカーが手掛けていない比較的小エリアの“スモールセル”で世界に打って出る方針を明らかにした。スモールセルでは,一つの基地局アンテナで半径200m程度のエリアをカバーする。これに対して,大きなエリアをカバーするいわゆるマクロセルの基地局では半径500mから数kmをカバーする。

 NEC執行役員ネットワークプラットフォーム事業本部長の手島俊一郎氏はスマートフォンやタブレット型機器の台頭によって世界中でLTEのインフラ投資の前倒しが進んでいる現状を説明し,事業機会が増えていると指摘した(写真1)。NECは家庭やオフィスに設置する超小型の基地局であるフェムトセルや,基地局のバックホール・ネットワークをマイクロ波による無線通信で結ぶ同社の製品,「パソリンク」などで移動通信事業者との関係を持つ。フェムトセルについては33の移動通信事業者で,商用または試験サービスを実施している一方,パソリンクは世界140カ国に納入済みという。ここを橋頭堡にして,LTEの基地局の納入を目指す。

 とはいえ,スウェーデンのEricsson社や中国Huawei Technologies社など,大型の基地局で真っ向勝負しても勝ち目は薄い。そこで,ビルの壁面や電柱などに設置できる小型の基地局を用意し,まずこれを移動通信事業者に売り込むことを狙う。移動通信では同じ基地局アンテナと複数のユーザーが同時に通信することから,基地局アンテナ当たりの通信エリアを大きく取ると,スループットが低下する。通信トラフィックが大量に発生する都市部には,大型の基地局ではなく,小型基地局の方が需要があると見ているという(写真2)。

 こうした戦略の一環として,NECは2011年1月17日に中国の通信インフラ・メーカーであるWuhan Research Institute of Post and Telecommunications社と提携し,TD-LTEおよびFDD LTEに対応した基地局などを中国の移動通信事業者に対して販売することを目指すという発表をした。メリットがあれば,世界各国で同様の提携を進めていくという。