図1 説明するNTTドコモ 移動機開発部 技術推進担当 担当課長の金井康通氏
図1 説明するNTTドコモ 移動機開発部 技術推進担当 担当課長の金井康通氏
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図2 三洋電機と開発したWPC規格に準拠した携帯電話機と充電台。2010年10月に開催された「CEATEC JAPAN 2010」で初披露された
図2 三洋電機と開発したWPC規格に準拠した携帯電話機と充電台。2010年10月に開催された「CEATEC JAPAN 2010」で初披露された
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 ワイヤレス給電の業界団体であるWireless Power Consortium(WPC)は2010年12月2日,日本では初めてとなる記者発表会を開催した( Tech-On! 関連記事)。その中で,NTTドコモ 移動機開発部 技術推進担当 担当課長の金井康通氏が登壇し,同社のワイヤレス給電への取り組みと,WPCが規定する給電仕様に期待することや要求したいことを述べた。NTTドコモはWPCの参加メンバーではないが,「ワイヤレス給電の標準規格は携帯電話機業界にとってインパクトがある。積極的に関わっていく」(金井氏)方針である(図2)。

 同社は,2005年ごろからワイヤレス給電に対応する携帯電話機の試作を進めている。給電用のコネクタが不要になる利点に期待しているためだ。具体的には,給電台に置くだけでよいため利便性が向上するほか,コネクタがなくなるため端末の薄型化が可能,接点不良のリスクがなくなり信頼性が向上する,防水製品を作りやすくなるといった点を挙げた。

懸念は通信電波への影響


 ワイヤレス給電を携帯電話機に適用する際に課題となるのは,通信電波の受信感度の劣化である。そこで,NTTドコモでは,試作した端末を用いて2GHz帯と800MHz帯,1.7GHz帯といった通信に使っている周波数帯で調査を実施した。通信のほか,Felicaやワンセグ,GPS,Bluetoothなどへの影響も考慮した。最近では,ナビゲーション関連の方位センサや,開閉検知用のホール素子などのセンサへの干渉を調査しているという。これまでの調査で得られた結論としては,「アンテナへの干渉は,コイルの配置を考慮すれば問題ないレベルまで持っていけると考えている」(金井氏)とした。

 一方で,課題も明確になった。ワイヤレス給電の出力制御方式や保護回路などが統一されていないため,普及に時間が掛かることだ。さらに,給電台と端末をしっかりと位置合わせする必要があり,「独自規格ではワイヤレス給電の持つ利便性を生かしきれない」(同氏)と判断して,製品化を見送っていた。

 こうした問題意識を持っていた中で設立されたのが,ワイヤレス給電規格の業界標準化を推進するWPCだった。WPCは,給電規格の世界規模での標準化と位置合わせの自動化を目指しており,「当社が認識していた過去の課題が解消され,ワイヤレス給電普及の下地ができた」(金井氏)と期待を寄せる。

4項目で評価中


 ただし,WPCの規格は給電部分のみを規定しており,電波干渉など通信への影響を十分考慮していない。そこで,NTTドコモでは干渉への影響の評価を進めることにした。具体的には,次の4項目の評価軸を挙げた。

 (1)800MHz~2GHzへの受信感度劣化を抑えること。端末を給電台に置くと,コイルは金属のため感度が劣化する懸念がある。そこで,「充電中でも3GPP基準の受信感度を最低限守ってほしい」(金井氏)との指針を示した。評価の途中ではあるものの「現時点では,ほぼ達成できると見込んでいる」(同氏)とした。(2)給電台に内蔵されているイッチング・コンバータに起因するノイズ放射の影響を抑えること。400~800MHzの周波数を使うワンセグやマルチメディア放送を,端末を充電しながらでも楽しめるように対応することが欠かせないとする。(3)給電台には,当初から高い互換性を保つこと。例えば,海外旅行先のホテルにQiマーク搭載の給電台がっても充電に失敗すると「おそらく2度と使わなくなる」(同氏)との懸念があるためだ。(4)方位センサやホール素子に影響を与えるものは使えない。今のところ「電力を送る電磁誘導コイルが,センサの精度には影響しないという結論に至っている」という。