Alcatel-Lucent Shanghai Bell社のPoggianti氏
Alcatel-Lucent Shanghai Bell社のPoggianti氏
[画像のクリックで拡大表示]

 2010年11月17日~18日に中国・香港で開催中の「Mobile Asia Congress 2010」で中国Alcatel-Lucent Shanghai Bell Co.,Ltd., LTE Asia Pacific,TD-LTE Product Line, Vice PresidentのPhilippe Poggianti氏にインタビュを実施した。同氏は上り・下りを同一周波数を使って通信する「TD-LTE」製品の責任者である。TD-LTEと,LTE時代のアプリケーションについて話を聞いた。

 TD-LTEは中国だけの規格と捉えられがちだが,もはやそうではない。我々が協力して,実施しているTD-LTEのトライアル・サービスの中で公表できるのは中国China Mobile社とフランスで行われているOrenge(仏France Telecomの携帯電話サービス・ブランド)のトライアル・サービスだけだが,中国以外の多くの地域で実施されている。具体的には中国を含む7カ国で10のトライアル・サービスを実施している。

 TD-LTEの利用周波数については2.3GHzと2.6GHzが主要な周波数になっている。3GPPで認められていないため,これ以外の周波数での展開が難しいからだ。3.5GHzでWiMAXを提供している地域があることから,この周波数が2011年に3GPP Release 10では追加されることになる。

 LTEの次世代規格,LTE-Advancedに移行する時代には,TDDの帯域の通信方式としてWiMAXではなく,TD-LTEの次世代規格が支配的になると予測している。そのため,これからTDD方式を使った通信サービスを開始しようとする通信事業者には「将来を考えてTD-LTEを選択すべきだ」と話している。TD-LTEはFDD方式のLTEと部品がほぼ共通化できるため,ユーザー用端末や基地局装置の選択肢が広がるし,コストも下がる。WiMAXサービスを始めて,その後TD-LTEの次世代規格に移行するというシナリオも考えられるが,一度ユーザーが使い始めた端末を回収し,新しい通信方式の端末に変更してもらうのは非常にコストがかかる。

 LTEにはこれまでの携帯電話機やスマートフォンに加えて,自動車や家電などさまざまな機器がつながってくると考えている。というのも,携帯電話事業者が新しい収益モデルを求めているからだ。かつて携帯電話事業者は,音声とテキスト・メッセージを収益の柱にしてきたが,今はビデオや音楽などさまざまなサービスで収益を獲得しようとしている。こうしたアプリケーションでの収益の伸びが鈍化しており,次の収益の柱を探している。

 その入り口として自動車は有望だ。自動車の中は非常にパーソナルな空間であり,複数の人が同乗する。具体的には,音楽や映像などを再生するニーズがあるし,同乗しているユーザーごとにほしい情報が違う。位置情報ベースのサービスなど,通信を使うことで付加価値を高めることができるものもある。また,エンジン制御や安全のために自動車には大量のセンサが積まれている。これを集めて移動通信を介してサーバーに送り,解析すれば自動診断や遠隔からの監視などが可能になる。こうした大量のトラフィックを流すことができるのは,LTEだけだ。

 同様のことは,カメラやゲーム機といった日本が得意とする家電機器の分野でもいえる。例えばビデオカメラにLTEのチップを搭載すれば,リアルタイムで映像をサーバーに送ることができる。Alcatel-Lucentは携帯電話事業者と,自動車や家電といった多様な業界の間に入り,お互いのニーズの洗い出しや,相互接続の確保などを実施する「ng Connect Program」という活動をしている。パートナーの中には韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.もいる。是非とも日本のメーカーにも参加してほしい。(談)