2010年11月10日,「FPD International 2010」展示会場近くのホテルで,3Dディスプレイ・フォーラム「3Dに適したディスプレイと,新市場開拓を徹底議論 ~液晶/PDP/有機EL/裸眼3Dの技術進化,TV/デジカメ/サイネージの市場開拓を展望」が開催された。3次元(3D)映像を表示するディスプレイ・デバイスと3Dアプリケーションについて,7人の講師がそれぞれ展望した。

3Dディスプレイのあるべき姿を探る

 トップ・バッターは「液晶のシャープ」から研究開発本部の岡元謙次氏が講演した。「高輝度,低いクロストークの3D表示にはどんな秘密があるのか」という観点から話した。「4原色の“クアトロン技術”は3D表示でどんなメリットがありますか?」という質問に,岡元氏は「それは明るさです」とズバリ。「開口率が高くなり,解像感についてもサブピクセル技術によりディテールまで表現力が豊かになります」と答えた。クアトロン技術によって解像感が高まるのは,4原色により,色の形成に二つ以上のサブピクセルを使うため輝度が上がるから,と説明した。

 2番目は「3Dプラズマの発展」と題して,パナソニックでPDPの研究開発に取り組んできたパナソニックプラズマディスプレイの川原功氏が講演した。エピソードが面白い。

 「久しぶりに販売店応援に行きました。家族で来られた方から『一番良いテレビは何ですか?』と聞かれ,『それは3Dテレビですよ』と自信を持って答えました。なぜなら,3D技術開発によって,2D画質も段突に良くなったのです。その方は,『じゃ,おばあちゃん,これにしとき』と言って,おばあちゃんのために購入していただきました。同じ話は2件あり,少なくとも奈良では2軒で,おばあちゃんが3Dをご覧になっています。また,別のお客さまですが,商談が終わった後に『動画性能をこのような画像で比較している』と説明すると,ご主人のところに行かれて『こういう差があるよ』とおっしゃり,安い液晶テレビではなくプラズマの3Dテレビを購入されました。われわれは『以前に比べてどのように良くなっているか』についてつい説明しがちですが,きちんと基本的にご説明することが大切だと思いました。販売店応援で気付いたことはたくさんありました」(川原氏)。

 技術説明では、コントラストの話が面白い。今はネイティブ・コントラスト(同一画面での白と黒)で500万:1まで上がっているが,パナソニックが“コントラスト志向”をし始めた2000年ごろは3000:1の実現がやっとだった。

 「初めに3000:1のPDPを出した時,『現実離れしたとんでもない数値を自慢している』と,米国の専門誌に出ていました。それだけ当時は並外れた数字だったんです」(川原氏)。

 それが今や500万:1である。「プラズマ・テレビは自発光なので,サブビクセルの数から,622万800のバックライトでローカル・ディミンング(領域輝度制御)しているという言い方もできます。単にスペックとしてのネイティブ・コントラストというより,プラズマは質感で勝負できます」(川原氏)。

 有機ELを用いた3Dディスプレイの開発については,ソニーの白石由人氏が解説した。ソニーが2010年の「CES」で公開した24.5型の3D有機ELテレビは、フィールド・シーケンシャル/液晶シャッター方式である。応答やコントラストで3D液晶テレビを圧倒的に上回る画質を得ていた。白石氏はそこで使われたインパルス型の駆動回路について解説した。「有機ELだから,すべて3Dが良いわけではなく,やはり技術の差はあります」(同氏)。心してブースの展示を見なければ,ということだ。

3Dの新たなアプリケーションを探る

 午後はアプリケーションの講演が行われた。まず,座長である筆者が「画質で語る3Dの問題と展望」というタイトルで講演した。次のように話した。