図1 会見するソニー CFOの加藤優氏
図1 会見するソニー CFOの加藤優氏
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図2 セグメント別の売上高と営業損益
図2 セグメント別の売上高と営業損益
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 ソニーは2010年10月29日,2010年7~9月期の連結決算を発表した(図1)。売上高は,前年同期比4.3%増の1兆7332億円だった。営業損益は,前年同期の326億円の赤字から大幅に改善し,687億円の黒字を確保した。家庭用ゲーム機やパソコンなど扱うネットワークプロダクツ&サービス(NPS)分野での販売が好調だった(図2)。税引前利益は627億円,当期純利益は311億円となった。

 NPS分野の売上高は前年同期比5%増の3691億円,営業利益は69億円(前年同期は590億円の損失)だった。家庭用ゲーム機「プレイステーション 3(PS3)」やパソコン「VAIO」の販売台数が増加した。PS3は,新型機を投入した前年同期の実績を上回る350万台を達成し,年間計画の1500万台に向けて順調に推移する。さらに,製造のコストダウンも着実に進んでいるという。

 ゲーム事業は,4四半期連続で黒字化を達成しており,会見した同社 CFOの加藤優氏は「通期での黒字化の見通しが立った」と手応えを口にした。さらに,「9月から販売を開始したPlayStation Moveの導入などにより,年末商戦に向けて弾みをつけたい」(同氏)と続けた。

テレビ事業は黒字化を断念


 液晶テレビ事業などを含むコンスーマー・プロフェッショナル&デバイス(CPD)分野の売上高は,前年同期比1.4%増の8853億円。営業損益は同158.7%増となる169億円の黒字だった。放送・業務用機器の売上が増加したプロフェッショナル・ソリューションや,イメージ・センサの売り上げが増加した半導体などが利益増加に寄与したほか,売上原価率の改善や構造改革費用の減少が進んだ。

 振るわなかったのは液晶テレビ事業。前年同期から50億円悪化し,160億円の損失を計上した。販売台数は前年同期比約50%増の490万台,売上高は同15%増の約2560億円と好調に推移したが,大幅な価格下落の影響を受けたとする。同社は2010年度のテレビ販売目標台数を2500万台に設定し,通期での黒字化も目指している。しかし,「第3四半期の出来にかかっているが,赤字解消は難しくなってきた」(加藤氏)と今期の黒字化を断念した。

 とはいえ,事業は改善に向かっているという。2009年に計上した損失は,「今の段階ではブレーク・イーブンにわずかに届かない程度に縮小できたのでは」(加藤氏)と赤字幅を減少できているとした。今後に向けた施策は「とにもかくにも商品力。モノリシック・デザインや3Dテレビ,インターネットTV(GoogleTV)など高付加価値品をそろえているので,価格競争の波を受けないようにしていくことが大切だと考えている」(同氏)と説明した。

「カメラのシェアは30%前後に上昇」


 デジタル・カメラ事業は,ミラーレス・カメラ「NEX-5」や,透過ミラーを搭載したデジタル一眼カメラ「α55」などの販売が好調を記録した。「話題性のある商品を投入できたことで,これまで10%以下だったレンズ交換式カメラの市場シェアは現在,30%前後まで高まっている」(加藤氏)という。一方のコンパクト型デジタル・カメラは,台数が大幅に増加したものの価格下落や為替の悪影響で若干の減収。ビデオ・カメラは為替や台数減少の影響で減収減益だった。

 ソニーは第2四半期の業績を受け,2011年3月期通期の連結業績予想を修正した。売上高は,下半期の想定為替レートを2010年7月時点の1米ドル90円前後から83円前後に見直したことで7兆6000億円から7兆4000億円に下方修正。営業利益は1800億円から2000億円へ,税引前利益は1700億円から2000億円へ,当期純利益は600億円から700億円へとそれぞれ上方修正した。