調査会社のBCNは2010年9月8日,大手家電/パソコン販売店のPOSデータを集計した「BCNランキング」から見た2010年夏商戦のデジタル家電市場の動向を発表した。エコポイント効果による薄型テレビの好調に加え,個人消費の回復も後押ししているという。

 薄型テレビは,エコポイント切り替え前の駆け込み需要で,2010年3月の前年同月比は台数ベースで255.8%,金額ベースで208.8%と驚異的な伸びを見せたが,4月と5月はその反動で伸び悩んだ。しかし,6~8月には順調に回復し,8月は台数ベースで163.5%,金額ベースで119.4%を記録した。例年は,8月は7月に比べて台数/金額ともに落ちるのが普通だが,今年は台数/金額ともに7月を上回ったという。

 ただし,平均単価は大きく落ちている。2009年8月の平均単価が10万4100円だったのに対し,2010年8月は7万6000円まで落ちた。原因は,単価が安い20型以下の製品が伸びたためである。2010年8月の前年同月比は,20型未満は台数ベースで198.6%,金額ベースで167.2%と高い伸びを示した。ちなみに,売れ筋の30型台は台数ベース155.8%,金額ベース110.8%である。価格は,30型台は下落が著しいのに対し,20型未満はもともと価格が安く下がる余地があまりないため,それほど落ちていないという。

 2010年8月時点でのメーカー別台数シェアは,シャープが46.4%と断トツで,ソニー14.7%,パナソニック14.5%,東芝12.8%と続く。BCNによると,シャープの現在の戦略の特徴は,他社がほとんど力を入れていない20型未満の市場を積極的に取りに行っていることだという。同社は2009年にはこの市場にはあまり力を入れていなかったため,20型未満の台数の前年同月比は2207.7%に及んでいる。

 LEDバックライト搭載製品は全体の43.3%になり,冷陰極蛍光管(CCFL)との逆転は目前になっている。3Dテレビはいったん立ち上がったものの勢いが続かず,東芝の製品投入待ちの状態だ。

 デジタル・レコーダーは,エコポイントには関係ないが,好調を維持している。2010年3月には薄型テレビとのセット買いなどの影響で,前年同月比は台数ベースで149.8%,金額ベースで137.0%を記録した。その後も好調を保ち,8月時点で台数ベースで144.5%,金額ベースで119.7%になっている。搭載する光ディスク・ドライブは,大半がDVDからBlu-ray Disc(BD)に移行した。2010年8月時点でのBDレコーダーの構成比は,台数ベースで81.5%,金額ベースで88.1%である。BDレコーダーの平均単価は,2009年8月の8万2000円から2010年8月には6万1700円と1年間で大きく落ちている。

 2010年8月のメーカー別台数シェアは,シャープが35.5%,パナソニックが30.6%,ソニーが23.5%,東芝が7.0%である。HDD容量は,シャープは320Gバイト搭載機が約6割を占めるのに対し,パナソニックは500Gバイト搭載機が約7割を占める。

地デジ内蔵一体型パソコンが好調

 デジタル・カメラは台数の伸びは順調だが,単価の下落が著しいという。特に,コンパクトカメラの平均単価は2010年8月の時点で1万8100円と2万円を割っている。一方,レンズ交換型はミラーレス機,特にソニーの「NEX」の好調もあり,台数・金額ともに高水準で推移しているという。

 携帯型音楽プレーヤーでは,2010年8月にソニーが米Apple Inc.を台数シェアで抜いたのがトピックだ。Apple社は新製品を間もなく投入するため,再びApple社が逆転する見込みだが,数年前に比べると両社の差は確実に縮まってきているという。

 パソコンは2010年6月以降,台数/金額ともに2ケタの伸びを維持している。特にデスクトップ型が好調だという。パソコン全体におけるデスクトップ型の台数構成比は,2010年3月には17.2%だったのに対し,8月には20.4%とじりじりと増えている。特に好調なのがモニタ一体型だ。平均単価は12万8400円と,モニタ・セットの8万6800円,モニタなしの5万5500円より高いにもかかわらず,デスクトップ型に占める割合は約7割に及ぶ。Windows 7の登場で,Core 2 DuoからCore iシリーズへの世代交代が起こっているのではないかとBCNは推測している。モニタ一体型は8割以上の製品が地デジ・チューナーを内蔵しており,小型テレビの代わりに買われている面もあるとする。特にNECが2010年4月に発売した夏モデルが好調だという。

 ネットブックの台数構成比は,ピーク時の約3分の1まで縮小した。ノート・パソコンに占めるネットブックの割合は,ピークの2009年5月には33%だったのに対し,2010年8月には12%にまで落ちた。スマートフォン市場は,基本的にiPhoneの一人勝ちだという。