図1 小型端末から映像を投影し,キャラクターを操作している。キャラクターは,緑色の領域の上に立った状態にある。
図1 小型端末から映像を投影し,キャラクターを操作している。キャラクターは,緑色の領域の上に立った状態にある。
[画像のクリックで拡大表示]
図2 説明パネル
図2 説明パネル
[画像のクリックで拡大表示]
図3 試作した小型端末の構成。プロジェクターの投射レンズとカメラの撮影レンズは同じ向きに配置されている。
図3 試作した小型端末の構成。プロジェクターの投射レンズとカメラの撮影レンズは同じ向きに配置されている。
[画像のクリックで拡大表示]

 東京大学大学院と慶應義塾大学大学院の研究グループは,ピコ・プロジェクターと画像認識技術を組み合わせたゲーム・システムを試作し,「CEDEC 2010」(会期は2010年8月31日~9月2日)に出展した。同システムでは,プロジェクターとカメラを一体化した小型端末を,片手で持ってゲームを操作する。プロジェクターからキャラクターの映像を投影し,端末を動かすことでキャラクターが移動する(図1)。例えば左右に端末を動かせば,キャラクターもその動きに合わせて左右に動く。このほか,端末を上方向に素早く動かすと,キャラクターがジャンプし,ゆっくり動かすと上側に飛ぶように移動する。

 そして,キャラクターが動く際,映像を投影した先にある実際の絵や物体などによって,キャラクターが異なる振る舞いをする。例えば,横線の上にキャラクターの映像が投影された状態で端末を左右に振れば,キャラクターが歩く(図2)。また,キャラクターをジャンプさせ,その上方に何らかの絵や物体があると,キャラクターは頭をぶつける。

 こうした操作は,カメラで撮影した画像をリアルタイムに解析し,ユーザーの動きや投影面と端末の距離,投影したキャラクターと実物体との衝突,物体の色や形などを認識して実現している。カメラで検知できない急速な動きや,重力方向を加速度センサで検知している。

 赤色や青色といった色の識別も可能で,例えば赤い火の形状をしていた個所にキャラクターを移動させると,キャラクターに火が付く。逆に青い水滴の形状をした個所にキャラクターを移動させると,その火を消すことができる。

携帯電話機の搭載も視野に


 今回のシステムは,一般に購入できるピコ・プロジェクターやカメラ,加速度センサを利用している。画像認識に必要な演算処理も,携帯電話機に搭載したアプリケーション・プロセサなどでも十分可能なため,「ハードウエア的には,プロジェクターと加速度センサ,カメラを搭載した携帯電話機であれば,適用できそう」(説明者)だという。

 ただし,実際の機器に搭載するには,映像の投射方向と,カメラの撮影方向を一致させなくてはならない。つまり,プロジェクターの投射レンズと,カメラの撮影レンズを同じ向き(平行)にする必要がある(図3)。

 プロジェクターを搭載した携帯電話機は既に実用化されている。こうした機種では,投射レンズと撮影レンズは直交して配置されているため,そのままで今回のシステムを適用できない。そこで,カメラのレンズか,あるいはプロジェクターの投射レンズの付近にミラーなどを付け,光路を変更させれば,今回のシステムを適用できる可能性がありそうだ。