図1 NTTドコモ,KDDI,イー・モバイルが「東京LTE国際会議 2010」で講演
図1 NTTドコモ,KDDI,イー・モバイルが「東京LTE国際会議 2010」で講演
[画像のクリックで拡大表示]
図2 NTTドコモのLTEに向けた周波数利用の考え
図2 NTTドコモのLTEに向けた周波数利用の考え
[画像のクリックで拡大表示]
図3 LTEが導入されども,複数の無線通信の混在は歴史上,やむを得ない
図3 LTEが導入されども,複数の無線通信の混在は歴史上,やむを得ない
[画像のクリックで拡大表示]
図4 トラフィックの激増が課題に
図4 トラフィックの激増が課題に
[画像のクリックで拡大表示]
図5 KDDIのLTE導入に向けた実験状況
図5 KDDIのLTE導入に向けた実験状況
[画像のクリックで拡大表示]
図6 端末も進化する
図6 端末も進化する
[画像のクリックで拡大表示]

 2010年12月から国内でいよいよ第4世代移動体通信(4G)の「LTE」が始まる。その現状と将来像についてNTTドコモ,KDDI,イー・モバイルの3社が,日経BPが主催する「東京国際LTE会議 2010」(2010年9月3日,品川カンファレンスセンター)で語った(図1)。

 2010年12月から「Xi(クロッシィ)」との名称でLTEサービスを始めるNTTドコモからは,同社 執行役員 研究開発推進部 部長の尾上誠蔵氏が登壇した。尾上氏はまず,「7年かけて,ようやくここまできた」と振り返った。同社では,LTEの導入について2004年ごろに議論を始めていたという。「当初は,(3Gすら普及が進んでいないのに)4Gの話なんてするなという雰囲気だった」と語る。それが移動通信のトラフィックが急増し始めたことで,周波数の利用効率が高いLTEの重要性が徐々に認知されてきたという。

 NTTドコモは,LTEの導入方針について,「1番を目指すのではなく,先頭集団を走る」(尾上氏)考えで進めてきた。これには3G導入時の反省がある。「3Gの導入は,結果として早すぎた。我々のサービス開始後,追随する企業が1~2年ほど現れなかった」(同氏)。LTEではこの反省を踏まえ,他社と協調する形で進めていく。

 LTE基地局の導入計画についてNTTドコモは,現状の3G網と共存する形で進める(図2)。当初はデータ通信専用でLTEサービスを始め,2011年から音声通信に対応した携帯電話機を用意する方針である。音声通信についてはまず,3G網を活用する形で始める。その後,IMSベースのVoIP/LTEを導入し,「究極的には回線交換サービスも含めて,すべてLTEで提供していく」(尾上氏)という。LTEの周波数帯としては,当初は2GHz帯の5~10MHzの帯域幅で始め,2011年ごろから1.5GHz帯を活用する。

 また,既存の3GとLTEとの関係についても言及した(図3)。「3GのHSPA+があろうとなかろうと,LTEの普及は進む」(尾上氏)とし,NTTドコモとしては「2重投資を避けるために,LTEに重点的に投資をする」(同氏)。とはいえ,これから3G網へ投資をする事業者については,「HSPA+を活用するのが自然」(同氏)との考えも述べた。数多くの通信方式が混在することになるが,尾上氏は「無線技術が進化する上で,通信方式の混在は歴史上やむを得ない」と考えている。

LTEはトラフィック増への対応

 2012年からLTEサービスの提供を予定しているのがKDDIである。同社 商品開発統括本部 モバイルネットワーク開発本部長 理事の湯本敏彦氏は,LTEの導入目的として「激増する通信トラフィックへの対応」を挙げた。KDDIの通信トラフィックは,これまで毎年40~80%程度の伸び率だったという。それがスマートフォンの普及などにより,「今後は倍々で増えていく」(湯本氏)とみている。これに併せて湯本氏は,2014年の通信トラフィックが2009年と比べて約40倍になるとの米Cisco Systems Inc.による試算も披露した(図4)。

 KDDIはLTEの導入に際して800MHz帯をメインとし,都市部などトラフィックの多い場所で1.5Hz帯を補完的に使う方針。既に導入に向けた実証実験を始めている(図5)。2010年3月には那須塩原地区においてLTE対応の5つの基地局を設置した。2010年10月ごろからは,1.5GHz帯を活用した実証実験を埼玉県で始める。実験では,「ほぼ満足できる通信速度が出ている」(湯本氏)という。

 また,湯本氏はLTEが普及した時代に求められる端末についても言及した(図6)。「ネットワークが高速化すれば,端末にも高速化が求められる」(湯本氏)と述べ,「現状の携帯端末における動作周波数1GHzのCPUコアが,2012年ごろにはデュアルコアになるだろう」(同氏)との見通しを示した。

 ただし,同社のLTEサービスの開始は2012年。それまでの“つなぎ”の策も準備する。それが2010年秋から導入予定の現在のEV-DOの搬送波を複数束ねて通信するEV-DOのマルチキャリア技術である。これにより,最大9.2Mbps(下り)の通信が可能となる。「これで本命のLTEまでつなげていきたい」(湯本氏)とする。

イー・モバイルは3G網にも注力

 最後に,イー・モバイル 技術戦略室 室長の諸橋知雄氏が登壇した。同社は2012年ごろからLTEを導入する方針である。現在は実証実験を進めており,「第1段階を終えて,第2段階に入っている」(諸橋氏)という。

 諸橋氏は,「LTEの将来性について疑う余地もない」と述べる一方で,LTEの導入の進め方については「さまざまな形があってもよい」と意見した。通信には「速度と料金のバランス」(諸橋氏)を何よりも重視する必要があるという。ところが,LTEの導入当初は初期投資がかさみ通信料金を安く設定できないとみられる。このため,安価な通信料金を実現するために3G網にも引き続き注力する考えだ。