エレクトロニクス実装学会(JIEP)の電磁特性技術委員会は,2010年8月27日に「2010 サマーセミナー」を拓殖大学の文京キャンパス(東京都)で開催した。同セミナーは10年以上前から開催されているが(Tech-On!関連記事),同委員会の委員長である王 建青氏(名古屋工業大学 電気電子工学科 教授)によれば,「これまではエミッション(電磁波の放出)に関連した講演が多かった。今年はイミュニティ(電磁波への耐性)も同じように扱うようにした」。

図1●サマーセミナー会場風景 登壇しているのは,最初の講師を務めた拓殖大学の澁谷昇氏。Tech\-On!が撮影。
図1●サマーセミナー会場風景
 登壇しているのは,最初の講師を務めた拓殖大学の澁谷昇氏。Tech-On!が撮影。
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図2●EMC用語の基本 拓殖大学のデータ。
図2●EMC用語の基本
拓殖大学のデータ。
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 今年のタイトルは「対応できていますか? 電子機器の最新イミュニティとエミッション設計-設計から評価・解析まで-」である。「サマーセミナー」というネーミングは初心者を対象にしたような印象だが,大半の発表は現場での先端に近い内容である。実際,少し前に学会や研究会で発表された内容+αになっている。質疑応答も活発な講演が多いのも例年通りである。酷暑の中にもかかわらず,100名を超える参加者があった(図1)。以下,各講演のポイントを紹介する。

「用語は正しく使おう」

 午前中には3件の講演があった。最初に登壇したのは拓殖大学の澁谷昇氏(情報工学科 教授)である。同氏はIEC(International Electric Commission:国際電気標準会議)のACEC委員会(Advisory Committee on Electromagnetic Compatibility:電磁両立性諮問委員会)の委員も務めていて,電磁雑音関連の各種用語の定義や試験方法などについて説明した。

 同氏はまず,JISでも決まっているという用語を整理した(図2)。EMC(electromagnetic compatibility:電磁両立性)という用語の下に,EMD(electromagnetic disturbance:電磁妨害)とEMS(electromagnetic susceptibility:電磁感受性)がある。EMDは電磁波を放出して妨害を与えること,EMSは電磁波の妨害を受けるこという。EMCはEMDを起こすこともなく,EMSの被害を受けることもないことする。

 「EMSをEMI(electromagnetic interference)と呼ぶ人が多いが,それは間違い」(同氏)と述べた。さらに澁谷氏はEMC規制とEMC規格の違いを述べた。EMC規格は,製品が発生する電磁雑音の測定法や,製品に対する電磁雑音の試験法を定めたもので,法的な拘束力はない。一方EMC規制は政府機関などの団体が,EMC規格を参照して,強制的な法律的拘束力を持って施行するものと説明した。