今回の技術(右)と従来技術(左)の比較。NHKと日立製作所の資料
今回の技術(右)と従来技術(左)の比較。NHKと日立製作所の資料
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 日本放送協会(NHK)と 日立製作所は共同で,放送映像を低解像度の映像データに変換する際に,画質の劣化を抑えながら識別情報を電子透かしとして埋め込むことができるトランスコード技術を開発した(ニュース・リリース)。変換後の映像データは,専用ソフトで識別情報を把握できるため,データ流出などを抑えられるとする。

開発した技術は,放送映像の特徴を検出し,目立たない領域を選択した上で知覚できない程度に画像を変更した上で,電子透かしによる識別情報を埋め込むもの。映像が単調な領域や輪郭部を避け,絵柄の複雑な領域に多くの識別情報を埋め込むことで,画質の劣化を低減したとする。変換した映像データを異なる解像度に再変換する場合でも,識別情報を検出できるという。なお,電子透かし技術は,日立製作所が独自で開発したものを用いた。

 MPEG-2形式で100Mビット/秒である放送映像を,MPEG-4 AVC/H.264形式で512k~2Mビット/秒の動画ファイルに変換できる。NHKと日立製作所は,今回の技術を用いて変換処理した結果を明らかにしている。例えば,1440×1080画素で100Mビット/秒である放送映像を,352×288画素で512kビット/秒である映像データに変換する場合,60分の映像データを約37分で変換できる。このうち,電子透かしを埋め込む時間は約17%とする。変換処理には,マイクロプロセサが米Intel Corp.の「XeonE5320」(動作周波数:1.86GHz×2),OSが米Microsoft Corp.の「Windows Server 2003」を用いた。

 NHKと日立製作所は今後,開発した技術を用いて,映像データの効率的なセキュリティ管理を実現する放送映像のファイル・ベース化を進めていくとする。なお,今回の技術は,2010年8月31日~9月2日に愛媛大学で開催される「2010年映像メディア学会年次大会」と,2010年9月7~10日にらスペインで開催されるコンピュータと人工知能に関する国際会議「International Symposium on Distributed Computing and Artificial Intelligence 2010 (DCAI 10)」で,発表する予定。