試作した送受信システム。左上のディスプレイには,VGAのカメラで撮影した映像が表示されている。右下は,WVGAのディスプレイで,動画を表示している。デジタル部とアナログ部は別チップ。デジタル部にはFPGAを利用している。
試作した送受信システム。左上のディスプレイには,VGAのカメラで撮影した映像が表示されている。右下は,WVGAのディスプレイで,動画を表示している。デジタル部とアナログ部は別チップ。デジタル部にはFPGAを利用している。
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試作システムの概要
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 ソニーは,銅線ケーブル1本(1対の差動伝送路)で映像や音声,制御信号といったデータ伝送と電源供給が可能な機器内配線技術を開発し,その送受信システムを試作した(発表資料)。こうした各種データや電源を,数十本のケーブルを使って伝送する従来技術に比べて,機器デザインの自由度や信頼性,耐久性の向上につながるとみる。
 
 今回の技術は,折り曲げや回転といった携帯機器の可動部内における配線での利用を主に想定する。例えば,表示部が回転する折り畳み型携帯電話機や,スライド型の携帯電話機のヒンジ部分,あるいはビデオ・カメラのビュー・ファインダーの可動部での利用に向ける。ここにきて携帯機器のディスプレイの高画質化が進み,データ伝送量が増えて必要となる信号線の数が増大している。これにより,コネクタがかなり大きくなる上,ケーブルの折り曲げが難しくなっているという。この課題を解決するために,ソニーは今回の技術の開発に着手した。

 今回,映像や音声,制御信号といった各種信号を時分割多重することで,ケーブル1本で双方向に伝送できる。加えて,ソニーが独自に開発したとする5値の符号化技術によって,データ伝送速度の高速化と,電力供給も可能にした。試作システムでは,940Mビット/秒のデータ伝送速度を実証したという。この速度での消費電力は,デジタル部を除いて80mW。スタンバイ時は0.3mWとする。

 試作システムでは,100Ωの「平行2芯シールド付きケーブル#36」を使用した場合に,940Mビット/秒で60cmの距離を伝送できる。電力供給能力に関しては,600mAの電流を流せるとする。

 ソニーは,早期実用化に向けてアナログ部の試作チップをロームと共同で開発した。デジタル部はソニーだけで開発。今後はソニーがデジタル部のIPをロームへライセンスし,ロームがアナログ部とデジタル部を1チップ化し,送受信ICとして販売する予定である。