ELIS復活祭を企画した日比野靖氏
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 LISPというプログラミング言語がある。FORTRANに次いで古い言語だとされ,主に人工知能やエキスパート・システムの研究・開発に使われてきた。現在ではあまり開発者人口は多くないが,若い技術者が中心になってLISPに特化したコミュニティ「Shibuya.lisp」を立ち上げたり,長らく絶版だった「初めての人のためのLISP」という書籍が復刊されたりするなど,再び注目を集めつつある。

 人工知能の研究が華やかなりし1980年代前後には,LISPの実行をハードウエアでサポートするコンピュータ,いわゆる「LISPマシン」(Wikipediaの記述)と呼ばれる製品カテゴリが存在した。その一つが,NTT 電気通信研究所が開発し,NTTインテリジェントテクノロジ(現在のNTTアイティ)が1987年に発売した「ELIS」というワークステーションである。世界で初めて1チップLSIのCPUで実現されたLISPマシンだ。

見事に起動したELIS
写真は後期型の「ELIS8200」。前期型の「ELIS8100」も動作していた。
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 ELISは現在,石川県にある北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)で保存されている。このELISに再び火を入れ,それをきっかけに今後のコンピュータの方向性を考えるイベント「ELIS復活祭」が,2010年8月7日から9日にかけてJAISTで開催された。企画したのは,JAIST 理事・教育機構担当 副学長 情報科学研究科 教授の日比野靖氏である。かつてELIS開発の中心だった人物だ。

「若い人がこんなにいるのか」

 ELIS復活祭が開催されるきっかけになったのは,東京大学で2010年3月3日に開催された竹内郁雄氏(現在は東京大学 名誉教授)の最終講義だった。竹内郁雄氏は,前述の書籍「初めての人のためのLISP」の著者であり,ELISが搭載するプログラミング言語「TAO」の開発者でもある。TAOは,LISPをベースに論理型プログラミングやオブジェクト指向プログラミングの機能を取り込んだマルチパラダイム言語だ。