「背伸びをすると失敗する」,SiCの量産で三菱電機が牽制球《訂正あり》
三菱電機は,SiCパワー半導体の事業計画について明らかにした。同社が報道機関向けに開催した「パワーデバイス事業説明会」(2010年7月15日に都内で開催)において,三菱電機 専務執行役 半導体・デバイス事業本部長の久間和生氏が語ったもの(Tech-On!関連記事1,同2)。同社は,SiCダイオードとSi-IGBTを組み合わせたハイブリッド型のインバータ・モジュールを2011年度から量産し,まずは同年度中に自社の家電や産業機器,太陽光発電システム関連製品などに搭載する計画である。当初は国内向け製品に搭載する。SiCダイオードの量産には当面,同社パワーデバイス製作所(福岡県福岡市)内の100mm(4インチ)ウエハー対応ラインを使う。同社は2013〜2014年度には,Si-IGBTをSiC MOSFETに置き換えたフルSiC型のインバータ・モジュールを量産化する計画である。
三菱電機は2009年12月に,3000枚/月の処理能力を持つ100mmウエハー対応の試作ラインをパワーデバイス製作所に構築した(Tech-On!関連記事3)。「これだけの処理能力があれば,当面の需要には対応できる。2010年代前半には,フル能力で生産できるほどの受注を社内外から得たい」(久間氏)とする。現在,このラインでSiCダイオードやSiC MOSFETを試作しており,いずれも予想以上に高い歩留まりで製造できているという。将来的には,150mm(6インチ)径以上のウエハーを利用することを念頭に入れている。量産当初はエピタキシャル膜をあらかじめ形成したエピ・ウエハーを利用するが,デバイス品質の制御性を高める観点から,今後,ベア・ウエハーを調達して自社内でエピタキシャル膜を形成する能力を持つことを検討するという。
SiCデバイスを搭載するインバータ・モジュールの用途については,「2011年度の自社製品への搭載に向けて,3〜4分野を候補として考えている」(久間氏)という。具体的には,家電,産業機器,太陽光発電システム関連製品などである。また,モジュールの外販も積極的に進めていく。中長期的には「SiCデバイスの搭載先として,自動車がかなり大きな比率を占めることになる」(同氏)とした。
三菱電機はこれまで,SiCデバイスの開発成果を盛んに発表してきた。それに比べると,製品化時期に関する計画は,競合他社に比べて慎重にみえる。例えば,SiCダイオードについては,国内ではロームが2010年5月に量産を始めた(Tech-On!関連記事4)ほか,新日本無線が2010年中の量産を計画している(同5)。この点について,三菱電機は次のように述べた。「新材料を使うデバイスを量産化するにあたっては,背伸びをすると必ず失敗する。我々は,SiCデバイスの品質とコストについて確証を得てから,量産化する。例えば,どういう欠陥がデバイス品質に影響し,どういう欠陥がそうでないかといったメカニズムを,量産前にきちんと把握することが必要と考えている」(久間氏)。そのうえで,SiCデバイスにおける同社の勝算は,「パワー半導体の要となる実装やモジュール化に,他社にはない多くのノウハウを持つ」(同氏)ことにあるとした。
次世代の高出力デバイス材料としてSiCとともに期待を集めるGaNについては,三菱電機は既にレーダーなど,航空・宇宙分野で使う高周波パワー・アンプでは製品化済み。インバータなどのパワー半導体モジュールへの応用については,「現行のGaNデバイスは(チャネルが)横型のため,縦型のSiCデバイスに比べて電流容量を稼ぎにくい。ただし,将来的にはパワー半導体モジュールへの応用に向けた開発を手掛ける可能性がある」(久間氏)としている。
記事掲載当初,第1段落と第2段落に「パワー半導体製作所」とあったのは,「パワーデバイス製作所」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。













