車内の様子
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動画表示やファイル転送などを同時に実行
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レイテンシの数値も表示
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LTEの送受信システムを搭載した自動車。上部にアンテナが見える
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 米Qualcomm Inc.は,次世代移動体通信規格「LTE:long term evolution」の送受信機を自動車に搭載したシステムを試作,移動環境におけるデータ送受信の様子を公開した。米カリフォルニア州サンディエゴにある同社の本社キャンパス周辺に,LTEの基地局を複数設置し,送受信システムを搭載した自動車との間でデータをやりとりした。同社はこれまで,この試作システムを顧客企業の一部などに紹介していたが,日本のメディアに公開したのは今回が初めて。

 Qualcomm社が,2010年6月30日からサンディエゴで開催している開発者向けイベント「Uplinq 2010 Conference」にあわせて公開したもの。LTEは米Verizon社がサービス開始に積極的な姿勢を見せるなど,米国でも早ければ今年度中にサービスが始まる予定。Qualcomm社は既にLTE対応の携帯電話機向けチップセットを発表しているが,こうした試作システムの動作を見せることで,LTEへの積極的な取り組みぶりを示した格好である。

 今回の実演では,2.1GHz帯の周波数を用い,10MHz幅の周波数チャネルを使ってFDD方式でデータを送受信した。2×2MIMOを利用したシステムで,実効的なデータ伝送速度は下り方向で最大36Mビット/秒,上り方向が数百kビット/秒程度である。自動車に搭載したシステムはFPGAなどで構成するボードを利用しているが,動作するソフトウエアは同社が出荷中の端末向けチップセットと同種のものが利用されているという。

 自動車に搭載したマルチ・ディスプレイで,LTEのデータ通信の状況を表示した。時速40km~60kmで走行中において,HDTV動画ストリームの表示や,FTPによるファイル転送などを同時に実行している様子を示した。通信環境の変動に対応し,優先度に応じて帯域を割り当てる様子や,異なる基地局におけるハンドオーバーの状況などを見せた。

 同社は今回の試作システムを,LTEの次世代規格である「LTE-Advanced」の研究開発のためにも活用しているという。LTE-Advancedでは,1チャネル当たりの帯域幅を80MHz~100MHzと大幅に拡張するほか,「マクロセルおよびピコセル,そしてフェムトセル間の高度な干渉回避技術などが求められる」(Qualcomm社)という。こうしたセル間の動作連携の知見を深めるためにも,試作システムのデータを活用する方針だ。