Vint Cerf氏
Vint Cerf氏
[画像のクリックで拡大表示]

 米カリフォルニア州サンタクララ市で開催中のネットワーク関連イベント「ConnectivityWeek 2010」の基調講演で,米Google Inc.,Vice President and Chief Internet EvangelistのVint Cerf氏が登壇した。Cerf氏は,初期のインターネット開発者で,「インターネットの父」とも呼ばれる。そのCerf氏は現在,米NIST(National Institute of Standards and Technology,国立標準技術研究所)のスマートグリッド標準策定に携わるなど,スマートグリッド分野に積極的に関わっている。各種の標準方式をまとめあげる組織である「SGIP(Smart Grid Interoperability Panel)」のBoard Memberとして,スマートグリッドにおけるネットワークの要求事項などを語った。

 まず,初期のインターネット開発者としての経験からCerf氏が指摘したのが,セキュリティー関連技術を盛り込むことの重要性である。「インターネットの初期においてはまだ開発途上だったが,ネットワークにつながっている端末を区別できる認証技術はとても重要である」(Cerf氏)。こうした技術は,ネットワークのセキュリティーを確保するだけでなく,ユーザーのプライバシーを守るためにも重要だと指摘した。

 さらにCerf氏は,スマートグリッドにおけるネットワークを開発する際には,電気だけではなく,水やガス,石油といった用途も十分検討するべきだという。スマートグリッド用ネットワークの開発においては,インターネットの設計でも利用されているような,柔軟性の高い技術を導入するべきとした。例えば現在,業界では,多数の無線方式や有線方式が標準規格の座をかけて争っている状況にあるが,全ての状況を満足させられる技術は存在しないと指摘した。「スマートグリッドで求められる通信方式はさまざまだ。例えば宅内で情報を転送する場合もあれば,複数の住宅を接続するような用途もあろう。また工場のような環境で用いる通信方式も必要だ」(同氏)。スマートグリッドで利用される機器は,比較的長期間利用され続けることが前提にある。そう考えると,こうした機器で用いる通信方式には,後で機能を追加したり変更したりできる柔軟性が必要になりそうだ。

 Cerf氏は,プラグ・アンド・プレイの発想も重要だと指摘した。将来,多数の機器がスマートグリッドに接続する可能性があるが,全ての機器を手動で細かく設定するのは不可能と見る。「インターネットと同様に,スマートグリッドにおいても,自律的な組織化や自己監視の機能が必須になる」(Cerf氏)。こうした点においても,ネットワークでの認証の技術は重要な役割を果たすという。

 Cerf氏は加えて,将来,想定外の事態も起こりうると指摘した。例えば,同氏は初期のインターネットにおいて,IPv4を設計したときに32ビットのアドレスを決めたことが,現在のIPアドレス枯渇問題につながったと見る。「IPv6とIPv4は,交換性が悪い。スマートグリッドを設計する時には,こうしたデザインを避けるべきだろう」(同氏)。