KDDI研究所が開発した「デュアルモードSDRモジュール」。EV-DOのダイバーシチ受信,モバイルWiMAXのMIMO受信に対応するため,アンテナを2本ずつ備えた
KDDI研究所が開発した「デュアルモードSDRモジュール」。EV-DOのダイバーシチ受信,モバイルWiMAXのMIMO受信に対応するため,アンテナを2本ずつ備えた
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デュアルモードSDRモジュールの概要
デュアルモードSDRモジュールの概要
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 KDDI研究所は,モバイルWiMAXとCDMA2000 1x EV-DOの両方式に対応する,ソフトウエア無線技術を用いた通信モジュールを試作し,「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2010」(2010年5月13~14日,パシフィコ横浜)に出展した。RF処理部は2.5GHz帯に対応するモバイルWiMAX用と,新800MHz帯に対応するEV-DO用の2系統を搭載しているが,ベースバンド処理には共通の回路を用いる。DSPで実行するデジタル・ベースバンド処理用のソフトウエアを切り替えることで通信方式を動的に変更する。

 今回試作した通信モジュールは150mm×200mmの大きさの筐体を採用しているが,「試作品よりも集積度が高いICを使えば,現時点でもPCカード型の通信モジュール程度まで小型化できそうだ」(説明員)という。同社は,特に車載情報端末などのように製品寿命が長い機器において,ソフトウエアの書き換えで新しい通信方式に対応できる利点が大きいとみている。

低電力な通信方式を選ぶ

 今回のソフトウエア無線通信モジュールでは,アプリケーションに応じて消費電力が低く済む方式を選択する機能や,切り替えに伴うペナルティーを考慮してハンドオーバーする機能などを実現した。消費電力を低減する考え方としては,即時性が要求されないアプリケーションの場合は1ビット当たりの消費電力が低い方式を選ぶ,即時性が要求されるアプリケーションでは電力の残量が少ないときにデータ伝送速度が低い方式を選ぶ,といった判断基準を採用した。

 モバイルWiMAX向けのベースバンド処理ソフトウエアは,並行してEV-DOの受信電力の強度やアプリケーションの要求をモニタし,切り替えポリシーに従ってEV-DOへの切り替えを行う。EV-DO向けのソフトウエアは,その逆の処理を行うという。