2010年5月1日から開幕する上海国際博覧会(上海万博)には,189カ国が出展する。会場は上海市中心部から近く,中心部から地下鉄でわずか十数分ほどのところにある。出展数に比例して会場は広い。上海市の黄浦江両岸に大きく二つに分かれており,二つの会場間は主にフェリーで移動することになる。広大な会場内の移動手段は基本的に徒歩となる。記者が歩いて回った特徴的な展示館を,写真で紹介していこう。

 中国館では,「低炭素の未来」を大きなテーマの一つに掲げる。敷地面積は約16万m2と広く,建物の高さは69mもある。入り口からも近く,赤色の逆三角形の外観がひときわ異彩を放っている。「低炭素」をテーマにするように,建造物内のすべての光源はLEDを使う。上海万博事務局によれば,これで1時間当たり少なくとも100kW節約できるという。加えて,トイレの水に雨水を利用する仕組みも設けた。さらに,建造物周辺には太陽光発電を利用した照明も配してある。なお中国館と同じエリア内に,香港館とマカオ館がある。

中国館

 日本館は,技術力のアピールの場となる。環境技術では,CO 2排出量をゼロにする「ゼロエミッションタウン」を見せる。具体的には,電気自動車をはじめ,圧電素子を利用して床を踏めば発電する「発電床」,家庭用燃料電池,透明度の高い太陽電池パネルを利用した「発電窓」,有機EL照明,などである。環境技術以外でも,電機メーカーなどが新しいカメラやテレビを披露する。例えばキヤノンは,動画の撮影中,笑顔を認識すると自動的に静止画として抽出可能な「ワンダーカメラ」を出展する。パナソニックは,152型のプラズマ・テレビを3個組み合わせ,そのテレビの前で人がジェスチャーをすることで画面のコンテンツを操作できるシステムを出展する。

日本館

 上海万博において,中国が出展させることに注力したのがアフリカである。その結果,アフリカから42カ国が出展した。これは「歴代の万博の中で最大の出展国数」(上海万博事務局)という。その多くは,単独での出展ではなく,アフリカ館の中に共同で出展する形を採る。

アフリカ館

 米国は中国との友好関係をアピールする。具体的には,中国系の米国人による科学技術や文芸,政治などの成果を壁に記すことで,その貢献をたたえるという。

米国館

 ロシア館では,童話の世界での理想都市をテーマとした。12個の「塔」を組み合わせ,外部の装飾はスクリーンにより変化させられるようにしてある。

ロシア館

 イタリア館には,ロボットや,太陽電池による電力を使って駆動する電気自動車などが出展される。外観には,施設内の温度により透明度が変化する素材を使った。

イタリア館

 カナダ館では,巨大な3Dテレビの前で自転車に乗りながら,カナダを旅行するような体験ができるシステムを披露する。実際に体験可能だ。さらに,シルク・ドゥ・ソレイユによるサーカス公演もある。

カナダ館

 イギリス館は奇抜だ。約6万本のアクリル製の細線で建造物の壁面を覆った。細線を通して,建造物の内部を照らすことで「種の誕生」を来場者にイメージさせるという。愛称は「たんぽぽ」。

イギリス館

 以下では,写真のみで紹介していく。

インドネシア館
竹で覆われたインドネシア館

ネパール館
民家の後ろに寺院を配したネパール館

韓国館
“アバター”が案内する韓国館

フランス館
セザンヌやゴッホなどの名画を展示するフランス館