コンテンツ業界も大きく変わる

 コンテンツがデジタルになってくると,放送,通信,出版,音楽流通といった業界も影響を受けるようになります。まず,影響を受けたのが音楽流通でした。Apple社のiTunesにより,かなりの音楽がネットワークで流通するようになっています。iTunesが登場する前から,CDが勝手にリッピングされてP2Pで配布されているというどうしようもない状況があったので,音楽業界はこの新しい波に乗らざるを得ませんでした。そういう意味では,出版業界はまだそこまでは追い詰められていません。

 通信業界への影響はまだまだです。例えば,無料の無線LANはそれほど多くないですから,携帯電話事業者にもまだ余裕があります。なので,消費者の立場では納得のいかないこともあります。

 私は犬の散歩をしながらよくYouTubeの動画を見るのですが,ものすごい帯域を使っているわけです。それでも月々2000~3000円で済む。ところが,ごくわずかの帯域しか使わない通話は時間課金です。このおかしな状況が,過去の電話というビジネスの延長で,まだ続いています。電波の利権がありますから,この状態がかろうじて保たれていますが,長くはないでしょう。10年後,20年後になれば,すべて定額制になっているはずです。そうならないとしても,音声とWebの閲覧でビット単価が異なる状況は終わっているでしょう。

 コンテンツの最後の砦が放送です。この業界の改革は,私が生きているうちにぜひ起こってほしいと思っています。電波の利権を持っている放送局がコントロールする時代から,ネットを通してダウンロードやストリーミングでテレビ番組を視聴できるようになってほしい。そのためには,消費者の行動パターンやビジネスモデルなど,変わらなければならないところがいろいろありますが。そうなれば,コンテンツを作る側と消費者が近づいて,現在は両者を仲介している放送業界のビジネスが破壊されて,インターネットに近い世界になる。それは必ず実現すると思います。ただ,放送業界は,コンテンツ業界の中ではおそらく一番最後まで残るでしょう。

―― その2へ続く ――