MIT ProfessorのGang Chen氏(写真は本誌が2008年11月に撮影)
MIT ProfessorのGang Chen氏(写真は本誌が2008年11月に撮影)
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 米Massachusetts Institute of Technology(MIT)は,最も広く利用されている合成樹脂の一つであるポリエチレンを,その絶縁性は保ったまま,金属並みに高い熱伝導性を持たせるように変換する方法を発見したと発表した(発表資料)。論文も「Nature Nanotechnology」に掲載された。

 これまで,多くの樹脂は絶縁体であると同時に,熱を伝えにくい材料であることがほとんどだった。新材料は,高い熱伝導率に加えて,熱伝導の方向を制御できるという特徴も備える。このため,金属に代わる放熱材料として,例えばマイクロプロセサや各種ICチップのパッケージ,各種熱交換用フィン,携帯電話機の筐体など幅広い用途に用いられる可能性があるという。
 
 開発したのは,MIT,Professor of Power Engineering and director of Micro and Nano Engineering LaboratoriesのGang Chen(陳剛)氏のグループ。Chen氏らは,加熱して溶かしたポリエチレンから,原子間力顕微鏡(AFM)の微細なプローブを使って,繊維をゆっくりと引き上げることでこの材料を作製した。ポイントは,一度引き上げてから再度加熱し,さらに引き伸ばすことだという。

 この繊維を構成する分子鎖は,向きが同じ方向に揃っている。この方向についての熱伝導率の値は一般のポリエチレンの約300倍と高く,鉄(Fe)や白金(Pt)などの金属の値の1/2以上はあるとする。

 課題は,量産が可能かどうか。現時点ではまだ実験室で少量の繊維を作製している段階だが,MITのChen氏は「生産規模を拡大することは可能だ」と主張する。

■変更履歴
記事掲載当初,第1段落で,掲載された論文誌を「Nature Materials」としていましたが,「Nature Nanotechnology」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。