クラウド技術を使ったオンライン・クリッピング・サービスを手掛ける米Evernote corp.(http://www.evernote.com/)は2010年3月3日,国内で記者会見を開き,同社のサービス「Evernote」の正式な日本語対応を発表した。Webサイトやクライアント・ソフトウエアを日本語化するほか,90日以内に100%出資の日本法人を設立して,有料会員の決済も日本円で行えるようにする。
また,今回の記者会見では,キヤノン,ソニー,NTTドコモ,アイファイジャパン,インフォテリア,バリューイノベーションといった日本の企業との提携を発表した。各社はスキャナやパソコン,スマートフォンといったそれぞれの製品にEvernoteのクライアント・ソフトウエアをプリインストールして販売したり,有料会員の権利を付加して販売したりする。
Evernoteはオンライン上のサーバーに,ユーザーがアップロードした情報を蓄積するサービス。「ユーザーが関心を持つ,ありとあらゆる情報を,生涯にわたって保存する」(同社CEOのPhil Libin氏)と標榜し,Webページやテキスト文書,PDFファイル,紙の文書のスキャン画像,写真,音声データなどを「ノート」と呼ぶ形でサーバーに蓄積する。蓄積したノートは,キーワード等で検索できるほか,ユーザーが付けたタグで分類できる。欧米言語に関しては,画像内の文字を自動的に認識して検索対象にする。
データの蓄積や閲覧の操作は,同社のWebページ(Webクライアント)や専用クライアント・ソフトウエアを使う。データは同社サービスを通じて常に同期される仕組み。専用クライアント・ソフトウエアは,WindowsやMacintoshといったパソコン,iPhoneやAndroid対応スマートフォンなどで動作する。
CPUパワーの低い機器にも対応できる
Evernoteの利用は無料だが,蓄積可能な容量の拡大や追加機能を提供する有料会員を設けており,これが収益源となる。Libin氏によると,「250万ユーザーのうち有料会員は現在5万。Evernoteを長く使うほど,有料会員に転換する比率は高くなる。サービス開始から2年経過した現在は,ユーザー増加より速いペースで有料会員が増えている」と説明する。
今回の「日本語対応」ではWebページや専用クライアント・ソフトエアを日本語化する。画像の文字認識機能に関しては「ひらがな,カタカナと漢字の一部を実装する。漢字の認識は我々にとってチャレンジ。徐々に認識対象を広げたい」(Libin氏)とする。
今回,他の国に先駆けて日本への進出を決めた理由としてLibin氏は,日本のユーザー数の伸びを挙げた。「米国を除くと,日本のユーザーが最も多い。英国,フランス,イタリア,スペインの合計ユーザー数より日本が多いくらいだ。約1年ほど前から他国に比べ,日本のユーザーが突出して伸びる傾向が見えている。また日本のユーザーは他の地域の2倍アクセス量が多い」(Libin氏)とした。こうした状況を判断して,同社は当初,2010年夏ごろを予定していた日本語対応を前倒しした。「熱心な日本人ユーザーの協力などで可能になった」(Libin氏)とする。
今後設立する日本法人には,日本人の技術者を雇用する予定で,「日本の市場に特化した機能の開発を進める」(Libin氏)という。他の機器への対応については,「あらゆる機器にEvernoteを載せるのが究極の目標」と述べた。Libin氏は,Evernoteがクライアント側とサーバー側で担う処理負担を比較的自由に案配できる仕様になっていると説明し,「例えばCPUパワーの低い(家電の)機器に対応する場合は,ほとんどの処理をサーバー側で負担させるようにして対処できる」(Libin氏)とした。