開発した水素透過膜(右)
開発した水素透過膜(右)
[画像のクリックで拡大表示]

 田中貴金属工業は,水素分離(透過)膜に使用されるパラジウム(Pd)系圧延箔の薄膜加工技術を確立し,サンプル提供を開始すると2010年3月2日に発表した。膜厚を従来の15μmから5μmに薄くしたことで,水素透過量を従来の3倍に高めた。これにより,水素の製造装置や水素精製装置に用いる水素分離膜を小型化できる上,Pd使用量の削減によってコストを低減できるという。幅200mmのロール状のシートで提供が可能としている。

 家庭用燃料電池システムで利用する場合,約10L/分の水素ガスで1kWの出力が得られる。この水素ガスを供給するには,従来の膜厚15μmの水素透過膜の場合,220cm2の面積と4.0gのPdを必要とする。これに対して,今回開発した水素透過膜の場合,73cm2の面積と0.4gのPdで済むとする。面積は1/3,Pd使用量は1/10となり,大幅な装置の小型化と低コスト化を実現できるとしている。

 このほか,化合物半導体やLED,SiCなどの製造時に利用する水素ガスの高純度化をはじめ,産業用水素ガスの精製などへの適用を目指す。田中貴金属工業は,2010年3月3~5日に東京ビックサイトで開催される「FC EXPO 2010」に今回開発した水素透過膜を出展する予定である。