カネカは,電子デバイス用接着剤メーカーのケミテック(本社東京都府中市)と共同で,デュアル硬化タイプの紫外線(UV)・湿気硬化型接着剤を開発した。携帯電話機,ナビゲーション・システム,ネットブックなどの携帯型電子機器において,液晶デバイスなどのフラット・パネル・ディスプレイ(FPD)の屋外での視認性を向上できるものとしている。

 携帯型電子機器のFPDでは通常,落下時の衝撃からFPDを保護するための透明なカバーボード(保護材)を組み込む。直射日光が当たる屋外では,同カバーボードとFPDの間に空げき(エアギャップ)が残っていると,そこで光が錯乱して輝度やコントラストが低下し,画面が見にくくなる。そのため,こうした空げきを埋めるのに用いられているのが,耐衝撃性の高いUV硬化型樹脂である。ただ,カバーボードの裏には黒い印刷(ブラックプリント)が施されているケースが多く,その周辺部にはUVが届きにくくなるため,同樹脂の硬化が不十分になるという課題があった。また,こうした難点を回避するために,UV硬化型樹脂に熱硬化型の樹脂を配合する手法が用いられていたが,この場合はUV照射後に加熱するため,電子機器への熱によるダメージが大きいという問題があったという。

 今回開発したUV・湿気硬化型接着剤は,カネカの湿気硬化の配合/評価技術と,ケミテックの接着用途における配合/評価技術を融合して,従来からのUV硬化型樹脂に空気中の湿気で硬化する機能を付与したものだ。これにより,ブラックプリント周辺部を容易に硬化させられるとしている。空げきを埋められるため,視認性の低下を防止でき,加熱も不要にできるため,電子機器への熱によるダメージも排除できる。

 さらに,カバーボードに使われるガラスやアクリル樹脂と屈折率を同程度に設計することで,太陽光などが反射する環境での視認性を大きく改善することも可能。カバーボードやタッチパネルの材質であるアクリル樹脂やポリエチレン・テレフタレート(PET)との接着性にも優れているため,静電容量方式のタッチパネルタイプのFPDにも適しているという。加えて,新開発の接着剤は硬化前は液体なので,FPD表面にブラックプリントなどによる段差があっても,それを効率的に吸収できる。