ウィルコム 代表取締役社長の久保田幸雄氏。記者会見の冒頭,「このような事態になり,お客などに大変なご迷惑とご心配をかけ,心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。
ウィルコム 代表取締役社長の久保田幸雄氏。記者会見の冒頭,「このような事態になり,お客などに大変なご迷惑とご心配をかけ,心よりお詫び申し上げます」と謝罪した。
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 PHS事業者のウィルコムが,2010年2月18日,東京地方裁判所に会社更生手続き開始を申し立てた(発表資料)。負債総額は,2009年12月末日時点で2060億円に上る。通信事業者の負債規模としては過去最高となる。同社は同日,企業再生機構およびソフトバンク,投資ファンドのアドバンテッジパートナーズに事業再建の支援を正式に要請した。

 同社の通信サービスの契約者数は,2010年1月末時点で432万6000件(うちPHSが424万800件,WILLCOM CORE 3Gが8万5200件)である。同社は,契約者に対する通話・通信などのサービスは従来通り提供するとしている。

 同社が今回,このような事態に陥った直接的な理由の一つは,財務体質の改善を目的に,2009年9月24日に申請した,産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法所定の特定認証紛争解決手続(以下,事業再生ADR手続)である。この申請が消費者の不信感をあおる結果を招いた。「事業再生ADR手続の申請後,新規契約を獲得するのが非常に難しくなった」(同社 代表取締役社長の久保田幸雄氏)。2009年末における契約者数は3万~4万人/月純減したという。

 久保田氏はまた,次世代PHS技術を用いた高速無線データ通信サービス「WILLCOM CORE XGP(extended global platform)」への投資が経営の負担となったと説明する。同社は,2007年12月に総務省から次世代無線サービスの免許を取得し事業化を進めてきた。しかし,携帯電話事業各社との競争が激化し,加えて2008年秋以降の金融不安の影響も重なり資金繰りが悪化した。ただし久保田氏は今回,「XGPの計画はそのまま継続する」方針を明らかにした。

 「PHSはナローバンドだが,音声中心で低コストなサービスを提供できる。24時間無料通話サービスは高校生の支持を得ている。スポンサーが決まり資金繰りに目処が付けば,春・夏商戦に向けプロモーションを再開でき,再びウィルコムの魅力を訴えられる」(久保田氏)とした。このほか,パソコンのセキュリティ・モジュールやカーナビ,エレベーターといった機器への組み込み用途では,今後も市場の拡大が見込めると説明した。