2010年2月16日,KDDI 代表取締役社長兼会長の小野寺正氏が,スペイン,バルセロナ市で開かれている「2010 Mobile World Congress」(MWC2010)の基調講演に初めて登壇した。小野寺氏は「Broadening the Ecosystem through Mobile Broadband」と題されたキーノートに4番目のスピーカーとして登場し,日本国内におけるモバイル・ブロードバンドの普及状況と課題,KDDIが3.9世代移動体通信システム「LTE(long term evolution)」を,2012年から導入すると決めた背景などについて話した。
講演の中で小野寺氏は,「ハイスピードは重要だが,コストとキャパシティは事業者にとってもっと大切」と述べ,ブロードバンド環境をユーザーに低価格で提供する必要から,LTEのビット・コストと帯域の大きさをより評価したと説明した。また,トラフィックの時間経過を見せ,ケータイのデータ通信の利用が深夜にピークを迎えるということから,モバイル・ブロードバンドの利用の多くが,実は家庭内で行われていることを明らかにした。その対応策としてフェムトセルの導入を進めていることなどを説明した。
スマートフォンについては「従来はビジネス向けの用途が多く,市場は大きくなかったがiPhoneが全てを変えた」と述べ,iPhoneの登場以降,スマートフォンの市場が一般層に広がりつつあるとの認識を示した。今後については,Android搭載機に注目していると述べた。
講演後小野寺氏は,中国China Unicom社 Vice-Charman & PresidentのLu Yimin氏,スウェーデンEricsson社 President & Chief Executive OfficerのHans Vestberg氏,中国Huawei Technologies社 CSOのGuo Ping氏ら他の登壇者とディスカッションし,「技術面では,LTEの導入を妨げる障害はない」といった点で意見が一致した。
KDDIは第3世代携帯電話システムと(3G)として「CDMA2000」方式を採用している。このため,MWCを主催するGSM Associationとは距離があった。GSM Associationは3G方式としてW-CDMA(UMTS)を推進するグループで構成される業界団体だからだ。今回,KDDIが2012年からのLTE導入を決めたことで,今回の登壇が決まったと見られる。