東芝が2010年1月29日に発表した2009年度第1~3四半期(2009年4~12月期)の連結決算は,売上高が前年同期比9%減の4兆5341億円,営業損益が同1891億円改善し129億円の黒字となった(リリース)。直近の2009年度第3四半期(2009年10~12月期)は,売上高が前年同期比6%増の1兆5784億円,営業損益は同1679億円改善して102億円の黒字だった。

 営業損益が大幅に改善した要因は主に三つある。社会インフラ事業における原子力事業の増収,半導体事業の損益の改善,そして固定費削減の成果である。このうち,半導体事業は「NANDフラッシュ・メモリの需要拡大と価格安定により急回復している」(東芝 代表執行役副社長の村岡 富美雄氏)。東芝の半導体事業は2009年4~6月期まで5四半期連続で営業赤字を計上していたが,同年7~9月期に52億円の黒字に転換し,同年10~12月期も47億円の営業黒字となった。ただし,システムLSI事業とディスクリート事業は前年比で減収であり,営業損益はいずれも赤字である。

 業績回復への寄与がもっとも大きかったのは固定費削減である。全セグメントを通じて「売り上げの回復力はまだ弱いものの,固定費削減によってそれをカバーした」(村岡氏)状況にある。同社は2009年度に3000億円の固定費削減を計画していたが,2009年12月末時点で既に3100億円を削減し,当初の目標をクリアした。2009年度通期(2009年4月~2010年3月)では4200億円の固定費削減を見込んでいる。

 同社はこの決算発表に合わせて,2009年度通期の連結業績予想を修正した。通期での売上高を,2009年5月予想の6兆8000億円から6兆4000億円に引き下げた(pdf形式のリリース)。社会インフラ事業で設備投資が回復していないことや,家庭電器事業が不調なことなどが要因である。ただし,営業損益は従来予想通り1000億円の黒字を見込む。2009年度第4四半期(2010年1~3月期)に871億円の営業黒字をたたき出す必要があるが,「達成可能と見ている」(村岡氏)とする。