ミズノ製の「日本代表スピードスケートレーシングスーツ」。金メダルのイメージで金色をメインとした。
ミズノ製の「日本代表スピードスケートレーシングスーツ」。金メダルのイメージで金色をメインとした。
[画像のクリックで拡大表示]
皮膚の伸縮量/伸縮方向などの解析結果
皮膚の伸縮量/伸縮方向などの解析結果
[画像のクリックで拡大表示]
開発したメッシュ状の新素材
開発したメッシュ状の新素材
[画像のクリックで拡大表示]

 ミズノは2010年1月19日,バンクーバー五輪で日本代表選手が着用するスピードスケートのレーシングスーツを公開した(図1)。空気抵抗を前モデルに比べて約5%削減している。日本スケート連盟とのオフィシャルサプライヤー契約に基づいて完成させたものだ。開発では(1)空気抵抗の削減(2)力強いスケーティング動作のサポートとスケーティング姿勢の保持(3)着用時の快適性の3点を重視した。

 3次元コンピュータグラフィックスで再現したスケーティングの動作に基づいて皮膚の伸縮量/伸縮方向などを解析することで,最適なウエアのカッティングと素材を導き出す独自のウエア設計手法「ヴァーチャルボディデザイン」を適用している(図2)。スケーティングで特に重要となる首・臀部・腰・腕周辺の皮膚の動きに注目し,空気抵抗を削減できる素材や伸縮性の異なる複数の素材を組み合わせてレーシングスーツに仕上げた。解析だけではなく,風洞実験も繰り返し実施した。

 (1)空気抵抗の削減のため,楕円形のメッシュ状の凹凸を生地表面に樹脂加工した素材を新たに開発した(図3)。従来のウレタンラミネート素材と同等の伸縮性を確保しながら,空気抵抗の削減や通気性の向上に寄与するという。また,頭部の縫い目に突起を設けたことによって空気の流れに渦が発生することを抑えた。空気の流れが最初に当たる前頭部や胸上部には,空気抵抗の低いウレタンラミネート素材を利用している。これらの効果により,前モデルとの比較で約5%の空気抵抗低減が可能になった。

 (2)のスケーティング動作のサポートとスケーティング姿勢の保持に関しては,伸ばした状態から素早く縮める必要がある腕と臀部に対して,生地が伸びにくいウレタンラミネート素材を配置。生地が伸びにくい分,逆に伸びたときに戻る力が大きいためである。姿勢を保持するために皮膚の伸縮を抑える必要がある腰部分にも,同素材を配置している。(3)の快適性に関しては,熱気の溜まりやすい頭部や肩甲骨周辺に通気性に優れた素材を使用し,熱気や蒸れによるスーツ内の不快感を軽減した。