稼働開始したITmk3の商業プラント
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初生産されたアイアン・ナゲット
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 神戸製鋼所は,新製鉄法「ITmk3」を採用した世界初の商業製鉄プラントが生産を開始したと発表した。ITmk3は,高炉を使わない新しい製鉄プロセスで,造粒機で粒状に固めた粉鉱石と一般炭を回転炉床炉に投入して加熱し,還元から溶融,スラグ分離を約10分で処理するもの。還元された鉄は,「アイアン・ナゲット」と呼ぶ小石大の鉄源となって出てくる。ITmk3で製造されるアイアン・ナゲットは,金属鉄が96~97%を占める鉄源でほとんどスラグを含有していない。酸化しにくく粉化もしないため輸送も容易だという。

 高炉法に比べてエネルギ効率も高い。神戸製鋼所によると,ITmk3プロセスはCO2排出量を高炉法よりも約20%削減できる上,コークス炉や焼結炉などの前処理設備も不要となるという。高炉に比べて操業が容易で設備投資も少なくて済む。高炉では使用するのが難しかった低品位の鉄鉱石や石炭も活用でき,原料コストも抑えられるといった利点もある。こうした利点から,今後特に新興国での普及が期待できる。鉱山会社にとっても,鉱山にITmk3プラントを建設してアイアン・ナゲットを生産することで,資源に付加価値を付けられるという。

 新プラントは,神戸製鋼所と電気炉メーカーの米Steel Dynamics社が共同で,米国・ミネソタ州のホイット・レイクス市に建設した。年50万tのアイアン・ナゲットの生産能力を有しており,神戸製鋼所は2010年半ばにはフル操業させる予定。加えて同社は,アイアン・ナゲット製造プロジェクトを北米やベトナム,インド,ロシア,オーストラリアなどで幅広く展開していく計画だ。