写真は,ソニーの液晶テレビ「3D BRAVIA」(著者が撮影)
写真は,ソニーの液晶テレビ「3D BRAVIA」(著者が撮影)
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 「2009年前半は,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.のLED攻勢に完全にノックアウトされました。しかし,後半は何とか立ち直りのきっかけを作りました」と,ソニーで米国市場のテレビ・ビジネスを担当する松尾俊宏氏(Sony Electronics Inc.のテレビ・マーケティングのジェネラル・マネージャー)は言った。

 2009年8月まではSamsung Electroncisの「LED TV」攻勢に負けっぱなし。単なるエッジライト型LEDバックライト搭載の液晶テレビを,「LED TV」とネーミングしたパンチ力が凄かった(筆者には,秀逸にも,ずるくネーミングしたと感じられた)。Samsung ElectroncisはLED TVを「液晶を超える高級なテレビ」として位置づけ,同じく高級品に強いソニーを攻撃。一方,従来からのCCFL(冷陰極管)バックライト搭載の液晶テレビは徹底的に売価を下げる,という「ソニー挟み撃ち作戦」を実行した。

 ソニーは2008年末に持っていた28%の市場シェアを,10ポイントも落としてしまった。しかし,そこでくじけないのが,我がソニーだ。徹底的に販売店との関係を改善する策に出た。

 「地味ですが,彼らとより密接な関係を持つことが,結果的に良い成績を残すはずだと考えた。それまで3週間に1回程度だった担当者の訪問を,1週間に一度に,頻度を増やしました」。

 その結果,“バンドル・キャンペーン”でかなりのテレビが売れた。「PS3とテレビ,BDプレーヤーとテレビ,というバンドルで売った場合は,単体での価格が表に出ません。単価下落のイメージが薄いというメリットに加え,実際に大いに暴れました」(松尾氏)。

 効果的だったのが,キャンペーンの成果を正確に測ってデータベース化したことだ。32型の液晶テレビとPS3をバンドルした場合と,46型とPS3をバンドルした場合では,売れ行きの状況が違う。それをこと細かにトレースし,その分析をフィードバックし,次のキャンペーンに使う。

 「すると,非常に精密に販売計画が立てられ,市場ニーズに的確にマッチした販売戦略を実行できました」(松尾氏)。その結果,今では20%以上までシェアが回復しているという。2010年の新製品は,デザイン改革(表面が1枚のイメージのモノリシック・デザイン),IPTV対応,3D,LEDバックライトなどで攻める。

 「3Dは,ここ米国では,私はかなり早く普及すると思います。HDは10年かりましたが,その3分の1ぐらいではないでしょうか。すでに,これまで3Dの映画の歴史は長く,消費者には一から説明する必要がありません。HDは,そうした説明が大変でした。それに,メーカーのエゴではなく,スタジオや放送が積極的にサポートしています。だから,急激に普及すると見ています」(松尾氏)。