ソニー 3D&BDプロジェクトマネジメント部門 部門長の島津彰氏
ソニー 3D&BDプロジェクトマネジメント部門 部門長の島津彰氏
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 ソニーで3D戦略全体を統括する島津彰氏(3D&BDプロジェクトマネジメント部門 部門長)はこう言った。

 「ソニーは3Dを全面的に立ち上げます。3Dの普及にとって大切なことは仕組みを作ることです。デジタル・シネマで3D制作のノウハウを蓄積し,“疲れない3D映像”をどうやって作るか研究しています。デジタル・シネマでもスポーツ中継などのために60フレームが必要だと思います。フィルムのバーチャル・プリント・フィーなど資金援助の仕組みも,デジタル・シネマの普及のために大切です。もう一つ,放送は3Dの普及にとって極めて重要な分野です。早く放送コンテンツを作りたい。そのために放送局との提携を積極的に進めます」。

 この言葉の通り,ソニーは全方位で3Dを推進している。3D BD-ROMだけでは,タイトルが非常に少ない。せっかく3D対応テレビを買っても,リソースとしてはとても貧弱だからだ。

 そこで,放送にターゲットを絞り,「制作ノウハウを提供し,コンテンツを豊富に作り,放送網を通じて家庭まで流してもらい,それを3Dテレビで楽しむ」という,いわゆる「360度ソリューション」(デバイス,コンテンツ,サービスの三つがちょうどドライアングルのようになり,互いに密接な関係を持つ)を展開するのである。

 もう360度ソリューションでないと新規ビジネスの立ち上げは現実的に難しくなっているが,日本メーカーが「制作――コンテンツ――流通(放送,ディスク)――端末」というトータルの流れをここまでプロデュースした例は,初めてだろう。

 簡単にいうと,放送系は米RealD社のサイド・バイ・サイド方式を使い,BD-ROMのパッケージ系にはBD規格のフルHD方式を使って,3Dコンテンツを家庭に届けるという作戦だ。家庭というのは,ソニーの液晶テレビ「BRAVIA」のこと。放送系とパッケージ系のどちらのコンテンツも,フレーム・シーケンシャル/アクティブ・シャッタ方式で見るのである。

 撮影のノウハウを蓄積し,疲れない3D映像をどうやって作るかを研究するために,米Sony Pictures Entertainment社の中にソニーの3D映像開発拠点「ソニー3Dテクノロジーセンター」を作った点も注目だ。

 フットボール,Xゲーム,ラクビーなどのスポーツは3Dにぴったりだ。コンサートも3Dが面白い。「IMAX」で上映されている映画や,「Discovery Channel」で放送されているような自然もの,宇宙,工学,探検……という3Dにふさわしいコンテンツが期待できそうだ。「具体的には,ESPNのカレッジ・フットボールやXゲームの公式3Dスポンサーになり,DiscoveryやIMAXと3D専用ネットワークを立ち上げ,ソニーの3D撮影機材で制作し,スポンサードした3Dコンテンツをどんどん放送していきます」(島津氏)と言う。

 筆者は,ソニーの3D全戦略の展開図を入手した。ここに公開する。★印が今年のCESで明らかになった新規事項だ。

ソニーの3D全戦略の展開図(3D放送コンテンツ)。★印が今年のCESで明らかになった新規事項。ソニーのデータ。
ソニーの3D全戦略の展開図(3D放送コンテンツ)。★印が今年のCESで明らかになった新規事項。ソニーのデータ。
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ソニーの3D全戦略の展開図(3D映画,音楽コンテンツ)。★印が今年のCESで明らかになった新規事項。ソニーのデータ。
ソニーの3D全戦略の展開図(3D映画,音楽コンテンツ)。★印が今年のCESで明らかになった新規事項。ソニーのデータ。
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