図1 東レ・ダウコーニングが展示したSiC基板である。
図1 東レ・ダウコーニングが展示したSiC基板である。
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図2 東レ・ダウコーニングの展示パネル
図2 東レ・ダウコーニングの展示パネル
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図3 米II-VI社のSiC基板。右がパワー素子向けの4H型,左が高周波素子向けの6H型である。
図3 米II-VI社のSiC基板。右がパワー素子向けの4H型,左が高周波素子向けの6H型である。
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図4 SiCrystal社の4インチ基板
図4 SiCrystal社の4インチ基板
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図5 セラミックフォーラムの展示パネル
図5 セラミックフォーラムの展示パネル
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 パワー素子向けSiC基板は品質向上だけでなく,低価格化も進んでいる。SiC製パワー素子を手掛けるメーカーが増えたことによる需要の増加もあるが,品質が良い基板を提供するメーカーが増え,「価格競争が起きている」(複数の基板メーカー)ことが大きな要因である。ある基板メーカーによると,結晶欠陥の密度など品質によるものの,「口径3インチ(75mm)品の価格は,購入数が多い場合で7万円ほど。昨年は約10万円した」という。つまり,年率30%ほどで価格が低下したことになる。

 SiC基板のほか,基板上にエピタキシャル層を積層した,いわゆる「エピ基板」も複数のメーカーが販売している。国内の主なエピ基板メーカーは昭和電工である( Tech-On!関連記事1)。既に4インチのエピ基板を発売中だ。同社は他社からSiC基板を購入し,エピ層を積んで販売する。

 エピ基板の価格に関しては,「エピ層の厚みが10μmほどで3インチ基板の約2倍の価格になる」(複数のエピ基板メーカー)という。

関連研究会でSiC基板が相次ぎ展示


 こうした状況から,2009年12月17~18日に開催された「第18回SiC及び関連ワイドギャップ半導体講演会」でも,併設されていた展示会場でSiC基板(4H型)やエピ基板が複数から出展されていた。
 
 「トップ・メーカー(米Cree社)に負けない品質」(説明員),と胸を張るのが東レ・ダウコーニングである(図1,2)。同社は米Dow Corning Corp.のSiC基板を販売している( Tech-On!関連記事2)。3インチの4H型SiC基板で,マイクロパイプ密度を3個/cm2未満を保障する。「実際は約0.2個/cm2」(同説明員)だという。2009年5月以降,製造プロセスを大幅に改善したことで基板品質が向上した。マイクロパイプを除く,転位などの欠陥密度は5000~7000個/cm2ほど。基板表面に存在する結晶欠陥は,基板全体の5~15%とする。

 3インチ基板のほか,3インチのエピ基板も提供中。4インチ基板は2010年1月,4インチのエピ基板は同年7~9月の販売を予定する。6インチ基板に関しては,2011年のサンプル出荷が目標だという。

4インチ基板が当たり前に


 SiC基板の大口径化も着実に進んでおり,既に複数社から4インチ基板が提供されている。今回の展示会出展者でいえば,例えば米II-VI(ツーシックス)社やドイツSiCrystal社である。II-VI社については,日本法人であるツーシックスジャパンが出展していた(図3)。4H型SiC基板のマイクロパイプの密度は標準で1.3個/cm2,チャンピオン品は0個のいわゆる「マイクロパイプ・フリー」である。マイクロパイプを除く,転位などの欠陥密度は1万個/cm2を下回る。

 販売の予定はないが,5インチまで大口径化済み。今後はさら口径を拡大し,2012年前後に6インチ品を販売するのが目標である。また,今後はさらなる事業拡大を狙う。「2014~2015年ごろには,枚数ベースで現在の9倍にしたい」(ツーシックスジャパンの説明員)とする。なお,同社はエピ基板を手掛ける予定はないという。

 ドイツSiCrystal社は,その筆頭株主が2009年に入りロームに変わった( Tech-On!関連記事3)。とはいえ,現在のところ今までどおりSiCrystal社の基板はローム以外にも販売されているようだ。会場には日本の販売代理店(セラミックフォーラム)が4インチ基板などを出展していた(図4,5)。例えば,3インチ,4インチ基板ともグレード高い品種では,マイクロパイプ密度3個/cm2未満を保障している。

 このほか,中国のTankeBlue Semiconductor社のSiC基板を,日本の販売代理店(ニューメタルス エンド ケミカルス コーポレーション)が展示していた( Tech-On!関連記事4)。