これまではパネル本体の技術開発に終始していたが,それに加えて,これからはパネル以外の「+α」の技術と組み合わせることで,ディスプレイは進化し続ける。このようなトレンドが,2009年のテーマサイト「FPD」の記事から見えてくる。
象徴的なのが,タッチ・パネル技術である。そのインパクトは,「iPhone」に見られるような,機器の操作性向上だけにとどまらない。入力機能をパネルに組み込むことにより,手書きなどの新しい使い方が実用的になる。例えば,紙の本のように,自由にメモを書き込んだりすることができる。世界中の色んな人が書き込んだメモを,インターネットを介して皆が利用できるようになれば,それらのメモは情報の宝庫となるだろう。本を読みながら,そのページに書かれていることについて,世界中の読者の意見や感想を見たりすることも可能になるかもしれない。タッチ・パネルは,この未曾有の不況下でも市場が堅調に伸びており,新規参入も相次いでいる(Tech-On!関連記事1)。
2009年のFPDサイトで最もよく読まれたニュースは3Dディスプレイの記事だったが(Tech-On!関連記事2),この3Dディスプレイも「パネル+α」の技術といえるだろう。パネル本体だけでなく,右目用と左目用の映像を別々に用意するための撮像技術や,右目用と左目用の画像を分離するための技術が重要になるからだ。こうした技術の進展によって,従来の2次元映像では得られないような,迫力ある高臨場感を味わうことが可能になる。
パネル本体についても,次世代の基盤となるような技術が出てきた。代表例が,液晶パネルの光配向技術だ(Tech-On!関連記事3)。この技術は,光利用効率やコントラスト,応答速度を悪化させるという,従来の配向技術が持っていた課題を一挙に解決することができる。さらに,液晶分子を自由に配向させる手法を手に入れたことで,液晶パネルを進化させるアイデアの幅は格段に広がった。このほか,液晶パネルを全部置き換えてしまう可能性を秘める有機EL技術についても,韓国勢が積極的に開発を進めている(例えばTech-On!関連記事4)。
ディスプレイ各社は需要の拡大を目指して,「パネル+α」の技術で応用を広げるとともに,市場開拓の中心を先進国から新興国にシフトさせる。最大のターゲットは中国だ。2009年は,中国での液晶生産に関するニュースが続出した(例えばTech-On!関連記事5)。巨大な潜在市場を巡る戦いの火ぶたは切って落とされた。
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